それは「戦争を煽ったほうがビジネス的においしい」というものだ。もちろん、現場で働いている記者はこんなことを考えながら記事を書いていないのだが、ビジネスモデルがそうなっているがゆえ無意識に、国同士の対立や憎悪を煽るような論調の情報を流してしまっているのだ。

「そんなバカなことがあるか」と疑う人もいるだろうが、これはなにも筆者が勝手な想像や憶測で言っているわけではなく、歴史を振り返れば明らかな「事実」である。

 わかりやすいのは「朝日新聞」だ。この新聞は1931年の満州事変を境に、関東軍の方針に追従するようになる。この話をするときにマスコミは「軍の言論統制が強まった」などと被害者ヅラをすることが多いが、これは典型的な歴史の改ざんだ。

 ごくごくシンプルに、対立を煽る論調のほうが「会社的に儲かる」ということで編集方針を転換した、ということが記録にも残っている(2022年8月15日 PRESIDENT Online)。

 軍にのっかって中国への勇ましい態度を煽り続けた結果、1932年には38万部アップで約182万部となった。日中戦争が起こった1937年には198万部と順調に増えて、1940年には231万余部、1944年には戦前の最多部数である293万部あまりの売り上げを達成している。戦争を煽ったほうが「売れる」というのは他の新聞にも当てはまるし、よその国にも見られる傾向だ。

 戦争では「プロパガンダ」という言葉がよく聞かれる。政府や軍がメディアを利用した情報操作・世論誘導のことだ。

 日本軍の「大本営発表」やナチス・ドイツがラジオや映画を用いた人種差別と反ユダヤ主義、アメリカがイラク戦争を開戦するきっかけになった「フセイン大統領が大量破壊兵器を持っている」という主張などが有名だ。こうした情報操作に関して、よく聞くのが「メディア側は権力に屈して嫌々協力させられている」という勘違いだ。

 現実は先ほどの「朝日新聞」のように「そっちのほうが売れる」という経済的な理由から、自ら積極的にプロパガンダに加担する例も少なくないのだ。