「赤ですか。目立ちますね」

「いやもう、ディーラーを出た直後から写真を撮られっぱなしです。あ、せっかくだからフェルさん運転してください。僕はこれからいくらでも乗れるので」

 高橋氏は気前が良い。お言葉に甘えて運転席に座る。車内に漂う、いわゆる新車の匂い。

 5速のMT車だ。クラッチを踏み、ボタンを押してエンジンを掛ける。当たり前だがシエラと同じ音がする。

ジムニーシエラとノマドの違い

 まずは街中を抜けて首都高のランプへ向かう。走り出してすぐに、「あ、これは3ドアとは違うな」と感じるポイントが見つかった。それは段差を越えた後の“揺れ方”だ。

 3ドアのシエラは、2250mmと短いホイールベースゆえ、道路の継ぎ目や段差を乗り超える都度に、前後にピョコピョコと揺さぶられる独特のピッチングがあった。

 ノマドはホイールベースが340mm延長されて2590mmになっている。同じラダーフレーム+前後リジッドアクスルの構造でありながら、伸びた340mmのおかげで上下動の周期が明らかに長く、揺れの振幅がひと回りもふた回り抑えられている。ホイールベース34センチの差は驚くほど大きい。

 ラダーフレームのクロカン車だから、もちろん乗用車のように「フラットな乗り心地」、というわけにはいかない。入力そのものは、それなりにドシンと来る。それでも、3ドアで感じていた「小舟のようなピョコピョコ感」は見事に抑えられている。これは素晴らしい。

 高速のランプを駆け上がり、本線に合流する。

 ノマドの心臓はおなじみK15B型の1.5リッター直4で、カタログ上は最高出力102馬力。最大トルクは130N・m(ニュートン・メートル)だ。数字だけ見れば、今どきのコンパクトSUVにしては控えめだ。しかし実際の合流加速で困ることはない。2速、3速ときちんと回せば、何のストレスもなく流れに乗れる(軽のジムニーの場合は、それなりに頑張らなければなりませんからね)。

 ノマドは80km/hまでは素直に伸び、そこから先は“ジワジワ積み上げるタイプ”の加速感だ。100km/h前後でクルージングに移ると、3ドアとノマドの差は更にハッキリする。