糖尿病を抱えていた人が
足の傷に気づかず左足切断

 私は以前、ゴミ屋敷の現場を取材していた際、切り傷から左足切断となった事例を見た。ゴミ屋敷を片付ける作業員のAさんが糖尿病を抱えていて、現場で釘(くぎ)を踏んで左足のかかと付近からわずかに出血したものの気づかず、数日後に発熱のため病院を受診すると切り傷からの「雑菌の混入」と診断された。

 抗生剤の点滴や患部の洗浄など懸命の治療が施されたが回復せず、Aさんの命に危険が及ぶ状態になったため、やむなく左足の大腿(だいたい)部から切断となったのだ。

「本来、痛みは身体を守るための重要なサインです。けれども糖尿病の方は足の痛みを感じづらいので、それを自覚し、日々足を見ることが大切です」と菊池医師。

 ちょっとした靴ずれや魚の目、タコなどでも治らない創傷に発展することがよくあるという。

四つ目の異変は
「タコ」や「魚の目」

 そして持病がない人も自分の足の裏をよく確認したい。硬くなったり、赤くなったりしている部分はないだろうか。四つ目の足の症状として「タコ」や「魚の目」が挙げられる。

 角質が厚くなって盛り上がるタコも、芯が深く入り込む魚の目も、歩くと痛みを伴うことが多い。タコは広く圧がかかることでじんわりした痛みが出やすく、魚の目は円錐(すい)状の角質が深部を刺激するため鋭い痛みが出るという。深刻な病ではなくても、いずれも足に負担が集中しているアラームだ。

「タコや魚の目があるところに、集中して負荷がかかっているということです。その原因は筋力や姿勢バランス、骨格変形、履物などさまざま。当院では足の症状に悩む方へのアドバイスはもちろん、足の変形がひどい場合には手術を提案することもあります」

 足のケアについての基本は、よく見る、十分な保湿をする、柔軟性を保つためのストレッチだ。詳しくは下北沢病院医師団がまとめた『“歩く力”を落とさない!新しい「足」のトリセツ』(日経BPマーケティング)が役に立つので参照してほしい。

「歩くこと」は脳に刺激を与え、筋肉量を増やして、生活習慣病を予防する――全身の健康のために重要だ。

 しかしそのぶん足は私たちの体重を支え、休みなく働き、使うほどに負担も蓄積しやすい。日々足の状態を確かめ、いつまでも元気に歩ける足を保ちたい。

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>>【第2回】「歩き方を見れば一発でわかる…「脳梗塞・脳萎縮・認知症」リスクが高い人の決定的な特徴」は11月28日(金)に配信予定です

「歩き方には、脳の異変が現れる」と国立環境研究所の谷口優主任研究員は言う。脳梗塞・脳萎縮・認知症のリスクが高い人の歩き方には、一目でわかる明らかな特徴があった――。