日本テレビの対応は
適正と言わざるを得ない

 日本テレビは国分氏問題の一連の対応について、外部の弁護士など有識者で構成されたガバナンス評価委員会を設置し、事案の覚知から公表に至る対応を検証している。そして、ガバナンス評価委員会から、一連の対応は「事案に即した適切なものであった」と評価されている。

 そもそも現在の公益通報者保護法では、内部通報対応業務を行う担当者(以下、従事者)には守秘義務と罰則が導入され、従事者が正当な理由なく通報者の特定につながる情報を漏洩した場合には刑事罰(30万円以下の罰金)を科せられる。

 したがって、ハラスメント被害報告が内部通報で行われていた場合、具体的な行為を言ってしまえば、相手が有名人である国分氏だけに、通報者が特定されてしまうだけではなく、自社の従事者まで刑事罰のリスクにさらすのだ。フジテレビと違い自社の幹部等も被害に絡んでおらず、その点での説明責任もない。

 フジテレビと中居氏の案件を見ても、ハラスメント加害者が芸能人である場合、ファンらが被害者に対して誹謗中傷を行うことは想像に難くない。被害者に対して二次加害が行われる可能性は、極めて高い状況であったし、今もそうだろう。

 このような状況では、日本テレビとしては、自社の従業員(通報者)を守るのは当たりまえだ。具体的な行為を言えない以上、「コンプライアンス違反」としか言いようがない。危機管理の観点からは、日本テレビの対応は、適正と言わざるを得ないのである。

法人間カスハラ事案の特殊性
中居氏と国分氏の共通点とは

 今回の日本テレビの対応は、法人間のカスタマーハラスメント、それも公益通報が絡むケースについての危機管理広報の在り方について、重要な示唆を含んでいるので学びが多い。

 労働施策総合推進法は2025年の一部改正で、職場におけるカスタマーハラスメント防止のための措置を講じることを、事業主に義務付けた。今後、法人間におけるカスハラに絡む内部通報が寄せられるケースは、どこの企業でも起こり得る。

 法人間でカスハラが起きた場合、カスハラ認定された当人(加害者)は、被害者の人権や尊厳を毀損しておきながら、自らがカスハラ認定されたことに対して人権侵害だの、契約違反だのと抗議するケースが想定される。まさに中居氏案件と、国分氏案件である。