この利用者への投資規模がケタ違いだったことが、初期段階でPayPayの登録者数を圧倒的に増やすことにつながり、後の高シェアの基盤となりました。
現在でもPayPayは自治体と提携して10%還元を行ったり、店舗と提携してクーポンで還元したりとインセンティブ提供を継続的に実施していて、利用者還元に投資をすることでユーザーのロイヤリティを高めています。
そして3番目の要素が一番重要なのですが、PayPayは行動経済学的にみて使いやすいし、還元が目に見えやすいのです。
スマホでPayPayアプリをタップすると多くのお店でそのままコード決済できます。ただスキャナーがないお店だともう一度「スキャンして支払う」をタップしてQRコードを読み込んで金額を入力する必要があります。PayPayが画期的だったことはこの一連の流れがとてもスムースなことです。
金額を入力するとお店の人に見せる必要がありますが、そのときには金額の数字が大きくなってしかもスマホ画面が反転します。お店の人がすぐに確認できるので支払いがスムースです。
この一連の行動に一切の面倒くささがないのですが、このユーザーインターフェースの設計は実は簡単ではありません。ライバルのQRコード決済を利用すると「あれどうやるんだっけ?」となることが多いのですが、この差が利用率の面では結構大きな差になります。
それに加えて、PayPayは利用するたびにどれだけポイント還元されるのかがすぐに表示されます。クーポンを使えばクーポンの還元額が、キャンペーン中の自治体のお店での支払いの場合はキャンペーンの還元額が即座に画面に表示されるので、行動経済学的には「何かとても得をした」ような気がするのです。
これまで決済市場でPayPayの牙城を崩す可能性のある、攻め口が異なる差異化戦略をとったライバルが1社あります。それが三井住友のVポイントです。
三井住友カードはPayPayの牙城を崩すために、PayPayとは違う形でこの戦略定石に挑みました。ひとつはVISAのタッチ決済という新しい利用法を普及させようとしたこと。QRコード決済とはまた違った新しい形なので、そこでは先行者優位が効いてきます。







