コード決済サービス「teppay(テッペイ)」を発表するJR東日本の中川晴美常務(左)とパスモの町田武士社長コード決済サービス「teppay(テッペイ)」を発表するJR東日本の中川晴美常務(左)とパスモの町田武士社長 Photo:JIJI

サービスが林立するQRコード決済市場に遅れて参戦する、JR東日本の新決済サービス「teppay」。SuicaとPASMOの統合で反撃に出る構えですが、正直、このままでは勝ち目はないと戦略のプロは断言します。しかし、teppayにも“生き残る道”は残されています。PayPayには絶対に真似できない、鉄道会社ならではの「3つの生存戦略」とは?(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

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大企業では絶対に倒せない
孫正義のPayPay

「なんで今になって?」

 そう感じた人も多かったのではないでしょうか。JR東日本のSuicaと東京メトロなど私鉄が発行するPASMOは共通のコード決済サービス「テッペイ(teppay)」を始めると発表しました。

 Suicaの場合、モバイルSuicaのチャージ額の上限はこれまで2万円でした。新サービステッペイではチャージの上限を30万円に引き上げたうえでSuicaとしてもテッペイとしても使えるようになるということです。Suicaは来年秋、PASMOは再来年の春にサービスを開始する予定です。

 コード決済業界では利用者7100万人のPayPayが圧倒的な存在感をもっています。利用者人数でいえばモバイルSuicaが約3900万人、モバイルPASMOが約500万人と対抗できるだけの利用者はいるのですが、果たして勝つことができるのでしょうか?

 競争戦略の定石から客観的に考えると、後発のテッペイが決済市場の中での地位を確立したPayPayに勝つのは非常に難しい状況です。この記事では、

1. 理論的にはどれくらい勝てないのか?

 を説明したうえで、

2. 戦略の専門家は勝つための戦略を作れるのかどうか?

 についてお話ししたいと思います。