国家主導の働き方改革は
資本主義を壊さないため

 そこで登場するのが「総資本」です。この総資本というのは、実際は国家の介入という形で出てきます。

 たとえば日本では国家主導で働き方改革が行われて、労働時間の規制がされ始めましたね。

 どうしてかというと、このまま働き過ぎると労働力の質が落ちると同時に、人々の生活における仕事の割合が大きくなりすぎて、特に若い人たちの出会いが少なくなってしまうからです。そうなると、結婚して子どもを産み育てる人が減ってしまい、持続的な発展が危ぶまれてしまうんですね。

 つまり資本主義がつぶれてしまうっていう危機感です。

 同じように子育て支援を政府があそこまでエネルギーをかけて行うのは、資本主義システムを持続させる上で必要だからです。

 もちろん政策を主導している当事者は人道的な観点や、社会的正義のためにやっているっていう認識だと思います。でも構図からすると、これは資本主義の生き残りに貢献するものなんです。だから、その政策は後押しされるわけです。

政府のあらゆる施策は
資本主義と密接に結びつく

 今、教育無償化っていうのが大きな問題になっているでしょう。日本全体が貧しくなっていく中において、教育を無償化する形で教育の内容を高めていくと。

 質を高めていかないと、日本の労働力の質が悪くなるからなんです。

 でもそのためには、本当はもう少し中に踏み込んで、今のゆがんだ形での受験制度を直す必要があり、それを直すためには5科目全部の入試をすべての大学に入れないといけないと私は思うんだけどね。大学入試の出口のところで理系・文系をなくしておく。そうするとそれに合わせた受験体制になるから。まだそこのところが政治家たちには見えてないようですね。

 話が広がってしまったので、一旦まとめましょう。

 社会が段階的に発展して、我々が生きている現代は「産業社会」と呼ばれる段階にいます。産業社会では、資本主義システムが密接に結びついており、資本主義は肥大化する傾向がある。