そして、肥大化する資本主義システムにおいて、社会を維持・発展させるためには、教育や子育てといった制度を整える必要が生まれた。それができたのが、国家という「総資本」だったということなのです。
「国家と社会が一体化した時代」とはそういった時代なのです。
現代社会は労働力と賃金の
交換でまわっている
そしてこの「国家と社会が一体化した時代」というものを、哲学者の柄谷行人さんは〈交換様式〉という別の形で表しています。
簡単に言うと、マルクスが生産力と生産関係で社会が発展していったという見方に対して、柄谷さんは社会がどのようなものを交換しあっているのかという視点から見ることで、システムを説明しようとしたんですね。
柄谷さんは大きく分けて4つの交換様式があるとしています。以下、簡単にまとめてみましょう。
A…「互酬」(贈与と返礼)
B…「服従と保護」(略奪と再分配)
C…「商品交換」(貨幣と商品)
D…「X」(Aの高次元での回復)
柄谷行人の交換様式 同書より転載
現代はA・B・Cの3つが混在して、キリスト教の三位一体(三一とも言います)みたいな――柄谷さんはこれについて三位一体とは言いませんが―― 一種の三位一体図式みたいなのが出来上がります。
労働者の賃上げ要求が
通ることは理論上ありえない
Cの「商品交換」は、具体的には商品と貨幣による交換です。いわゆる資本制社会ですね。労働力が商品化されている社会です。
労働者を時給1200円で雇っている場合、お店自体は1時間あたり1200円以上儲かっているはずで、そこに搾取の関係があると。どうやら実際には、お店は1時間あたり2000円の儲けが出ているとしましょう。







