「悪魔の文字?」岸田元首相がゼレンスキー氏に渡した“意味不明な贈り物”が生んだ衝撃の副産物写真はイメージです Photo:PIXTA

岸田文雄首相(当時)が2023年にウクライナを訪問した際、ゼレンスキー大統領に「必勝しゃもじ」を贈り、まるで戦場に送る迷惑な千羽鶴のようだと大批判を浴びた。だが、ウクライナ支援の一環として渡したこの不可解な贈り物が、日本を救っていたとしたら…?元外務省主任分析官で、対ロシア外交を中心に情報分析に従事した筆者が、「必勝しゃもじ」がたどった意外な帰結を語る。※本稿は、作家の佐藤 優『愛国の罠』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。

実害を及ぼさない制裁なのに
プーチンを刺激してしまった

 ウクライナ戦争に日本外交がどう対応したのかについて、「3つの体系」から見ていこうと思います。

 3つの体系とは高坂(編集部注/高坂正堯。国際政治学者)氏が指摘した、外交における「価値の体系」、「利益の体系」、そして「力の体系」のことです。

 まずは「価値の体系」です。

 侵攻当初、岸田文雄首相(当時)は、最大限の言葉でロシアを非難しました。加えてプーチン大統領やその娘、ロシア政府関係者などの日本における資産を凍結するという制裁をかけています。

 しかし、日本政府としては、制裁は見せかけの姿勢で、実際はそこまで制裁をかける気はなかったのだと思います。

 どうしてかというと、そもそもプーチン氏が日本で所有している資産なんてないに等しいから。日本政府としては、プーチン氏に対して日本国内の資産を差し押さえても実害がないからロシアをそれほど刺激しないのではないか、と考えた。

 ところが、日本人の発想とロシア人の認識は違うんですね。ロシア人の価値観ではこう考えます。

 もし日本にプーチン氏の資産があるのであれば、それを凍結するには合理性がある。

 一方、資産がないにもかかわらず凍結するというのは嫌がらせであり我々への「侮辱」である、と。