こういう話を官僚や政治家にいくら伝えても「総量規制で借金ができなくなった方は、夕飯のおかずを一品減らすとかして、あまり贅沢をせずに」なんて呑気なことを言っていた。
その後、総量規制とグレーゾーン金利の撤廃の影響で、中小の貸金業者はバタバタと潰れ、なんとか生き残ったアコムやプロミスなどもメガバンクに吸収された。多重債務者問題に取り組んでいた弁護士たちは「サラ金がなくなれば多重債務者問題は解決だ!」と勝ち名乗りを上げて、一部の弁護士は「過払い請求バブル」で多額の報酬を得て一件落着となったかのように見えたが、実際はなにも解決していない。
総量規制によって、どこからも金を借りられない多重債務者が自ら進んで「闇」に飛び込んでいるので、その被害が見えなくなっているだけなのだ。
あれから十数年を経て、金融庁は同じことを繰り返そうとしている。物価高で苦しむ人々の多くは低収入・低所得者である。先ほどの「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」の中に、『財務(支)局に寄せられた「多重債務」に関する相談の概況(2)』という資料がある。
その「相談者の年収」をみると、2024年の相談件数6552の中で「年収100万未満」「年収100万以上300万未満」「不明」で76%を占めている。「借金の規制強化」を進めるということは、このような低収入・低所得者をどんどん「闇」に飛び込むように背中を押すことなのだ。
規制を強めればしばらくすると、多重債務者の数は減るだろう。しかし、それは決して借金をする人が減ったわけではなく、詐欺や強盗という闇バイト、女性の場合は違法風俗などに身を墜とした「統計上はカウントされない多重債務者」が増えただけだ。
高市政権は労働時間の規制緩和を検討しているが、日本の治安向上のためにも「借金の規制緩和」もすべきではないのか。








