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トランプ政権下でFRB(米連邦準備制度理事会)の独立性はどう揺らぎ、利下げ圧力と次期議長人事は市場に何をもたらすのか。特集『総予測2026』の本稿、米国経済対談の後編では、AI投資バブルと、投資ファンドなどが企業へ直接融資するプライベートクレジットへの懸念、膨張する財政赤字とインフレ懸念が重なる米国経済の行方を、ジョセフ・クラフトロールシャッハ・アドバイザリー代表取締役と小野亮みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパルが読み解く。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
トランプ大統領による利下げ圧力と
次期議長人事で揺れるFRBの独立性
――FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策についてどうみていますか。
クラフト氏 FRBの独立性・客観性は、これから著しく損なわれていく可能性が高いと思っています。というのも、誰が次の議長を引き受けるのかがまず大問題だからです。トランプ大統領から「利下げしろ、約束しろ」と言われて議長になるわけです。
経済の実情から逸脱した“過剰利下げありき”になるリスクがある。FRBの信頼性が本格的に問われます。
小野氏 候補者として5人くらい名前が挙がっていますが、私は、ウォーラーFRB理事かなとみています。理事としての経験、マクロ経済や金融政策についての専門的な知識などが議長となる前提と考えています。
そういう基本的な条件が満たされていないと、たとえトランプ大統領の意向に沿った人事だとしても、市場の側が「そんな人物を議長に据えるのか」と反発し、逆に混乱の種になってしまうと思うんですよね。
ウォーラー氏は、もともとタカ派寄りだったのが最近はハト派寄りにも見えるところがあって、「宗旨変えしたのか」とも言われますが、話を聞いているとロジックが非常にしっかりしていて、納得させられてしまう。理論の組み立て方、説明のうまさ、コミュニケーション能力が非常に高い。
誰が指名されるにせよ、FRB議長にはFOMC(米連邦公開市場委員会)参加者はもちろん、市場参加者が納得するロジックを展開する能力が求められます。その真価は、インフレ再加速の懸念が強まる26年後半に試されることになると思います。失敗すれば「米国売り」、つまり株安、債券安、ドル安を誘いかねません。
クラフト氏 ポイントは、「トランプ大統領の要求を誰がのむのか」というところですね。次期FRB議長候補の一人であるブラックロックのリック・リーダー氏はトランプに言われて素直に利下げするタイプには見えません。ケビン・ウォーシュ元FRB理事も同じで、あの人も“言われた通りに動く”人ではない。
トランプ大統領の言うことを一番聞きそうなのは、やはりウォーラー氏か、あるいはケビン・ハセット国家経済会議委員長のような政権寄りの人物、ということになってしまう。誰が議長になっても、「利下げありき」のFOMCになってしまう可能性が高い。
トランプ大統領の圧力がFRBの金融政策にどう影響するのか。中間選挙は経済政策のかじ取りを変えるのか。次ページでは、クラフト氏と小野氏がFRBの過剰利下げリスクや関税引き下げの思惑、AI投資バブルと財政悪化懸念を掘り下げる。







