(1)抽象ではなく具体

 相手を評価する際「何となくダメ」という感情的な指摘や、「面白さが足りない」という抽象的な表現では当然反発を招く。その点、粗品の審査はとにかくディテールが鮮明だった。

 たとえば優勝したフースーヤの審査では「『ハイハイWi-Fiハイサイ歯医者』みたいなところの息継ぎも気になりましたね。そこは絶対ひと息で言った方がウケるのに」(「フースーヤ」評)と息継ぎひとつを変えるだけでもっと面白くなると言及した。

 またマーティーの審査では「こういう相方を正論で詰めていく漫才っていうのは、今日やった4分はホンマは2分半までに終わらせて、後半1分半でもっとエグく!エグく!2人で掛け合わなアカンと思うんですよ」と具体的な時間配分を示して改善点を指摘している。

 粗品から「羅列タイプのネタで羅列をやるなら、手数を増やすか、何か“かぶせ”を入れる等の作品感を出すか、フォーマット自体を見たことないものにするかのどれかにした方がいい」と指摘を受けたタチマチの安達周平は「すごっ。思ってたことと1文字もずれないことを言ってくれた」と感嘆するほど的確なコメントだった。

 ここでのポイントは、息継ぎのタイミングや時間配分といった、修正可能な「行動(アクション)」を指摘していることだろう。さらに、粗品はダメな点を具体的に指摘するだけではなく「このように変えるとより良くなる」という解像度の高い改善案をセットで提示しているのだ。

 上司からフィードバックを受けたものの、部下が「…それで、この後何をすればいいの?」という段階で放置されてしまっては、成果の改善にはつながらない。粗品のようにネクストアクションまで提案してもらえると、部下は動き出しやすい。