(4)徹底的なホンネ(ラディカル・キャンダー)
粗品の審査の根底には、お笑いという仕事、芸人仲間に対して強烈なリスペクトが感じられる。YouTubeの中で「ytv漫才新人賞」の審査が辛口となった点について、次のように理由を説明している。
「(出場した)みんなが仕上がっているのはわかるが、その上でもっとこうなるのにと講評している。そうしないともっと大規模な賞レースでは勝てないから」
粗品の辛口コメントの裏には、出場した漫才師たちへの期待が込められていたのだ。
粗品の姿勢は、米国大手IT企業なども取り入れるマネジメント概念「ラディカル・キャンダー(徹底的なホンネ)」に近い。これは「相手を個人的に深く気にかけながら、言いにくいコトをはっきり伝える」ことでチームの信頼関係を高めるというマネジメント理論。
「嫌われたくないから言わない」と保身に走るのではなく「相手のためを思うからこそ、本当のことを言う」――。粗品の「このままでは大規模な賞レースで勝てない」という言葉は、相手の成長を本気で信じるからこその「愛ある厳しさ」だと言える。
ビジネスにおいて、部下の成長やプロジェクトの成功を本気で信じているか。その熱量が伝わって初めて、厳しいフィードバックも「金言」に変わる。指導する人間はこの点を忘れてはいけない。
全国放送される「THE W」で、果たして粗品がどのような言葉を投げかけるのか。お笑いファンだけでなく、ビジネスパーソンにとっても人を評価し、育て、納得させるための「フィードバックの教科書」となるかもしれない。







