例えば、他の業種の仲卸との生産者や消費者についての情報交換などが売上上昇の鍵になっているのかもしれない。したがって、売上の上昇だけを見ても、それがエリアの特徴がショッピング外部性をもたらした効果なのか、それ以外の要因がもたらした効果なのかを区別することができない。

 実は、築地市場にはショッピング外部性の効果をこのようなエリアの特徴がもたらす他の効果と切り分けることができる設定がある。

 というのは、同じ近隣であっても、(1)通路を挟んで向かい合わせの店舗、(2)同じ並びの店舗、(3)背中合わせの店舗と3種類の近隣があり、(1)(2)は客の動線を共有しているが、(3)は直接は共有していない、と言える。したがって、ショッピング外部性は(1)(2)の近隣を通じてのみ影響が及ぼされるが、情報交換は(3)の近隣からもやってくる。

 図1.2(a)は黒で塗られた店舗にとって灰色で塗られた店舗は通路向かい合わせの店舗であることを示している。同様に図1.2(b)においては黒で塗られた店舗にとって灰色で塗られた店舗は背中合わせの店舗であることを示している。

 図1.2(c)(d)は通路向かい合わせと背中合わせの店舗それぞれの写真であるが、(d)からは客が通ることは想定されていないことがわかる。

 分析の結果、近隣の店舗がもたらす効果は(1)(2)からは大きく、(3)からはほとんどない、つまり通路によって客の動線を共有している場合にのみ近隣からの効果があることが示され、少なくともエリア内での情報交換によって売上の上昇が見られたわけではないことが示され、ショッピング外部性仮説の妥当性がさらに高まったと言える。

 原宿や銀座のようなショッピング街が形成される背後にあると考えられるついで買いのメカニズムは、このようにして、築地市場のデータから実証的に検証されたのである。

図1.2:向かい合わせと背中合わせの店舗同書より転載
『歩いて学ぶ都市経済学』書影『歩いて学ぶ都市経済学』(中島賢太郎、手島健介、山崎潤一、日本評論社)