築地市場は図の左側の長方形の部分と中央および右側の扇形の部分からなっているが、例えば左下にはマグロ・カツオを扱っている仲卸がほとんどいない場所がある。

 一方で黒で塗られた店舗が固まっている部分も所々に見ることができる。抽選はこのような店舗の不均質な分布を生み出しているのである。

同業種が密集するエリアに出店した
ニッチな魚屋の売り上げが上昇

 この店舗抽選を、『築地魚河岸三代目』(はしもと、2001)というマンガで知った筆者は、すぐに築地市場の銀鱗文庫という図書室を訪れ、室長の福地享子さんからさまざまな資料や仲卸業者の方を紹介していただいた。

 その中で、築地市場を訪れる客が他の店に寄ったついでに何か買う、という「ついで買い」という仲卸業界用語を知り、さらに、狭い種類の魚に特化している仲卸の方が、周辺に多様な店舗があるときについで買いの恩恵をより強く受けるのだという話を聞いた。

 扱う商品を特化している専門店の方がショッピング外部性の便益を受けやすいのではないかという仮説はここから得たのである。

 筆者が入手することができた資料が一番充実している1990年の抽選を分析したところ、比較的狭い範囲の魚に特化している仲卸の場合、抽選の結果たまたまより多様な種類の店舗が集まったエリア(周辺にマグロ専門店も、寿司ダネ専門店も、タコ専門店も、エビ専門店もあるようなエリア)に店を構えた場合、そうでない場合に比べてパフォーマンスが改善されることがわかった。

 これはつまり、買い回りを行う人々が、限られた時間の中でさまざまな魚種を買い求める必要があるため、さまざまな種類の専門店が立地しているエリアの魅力が高く、そこに引きつけられているという仮説と整合的な結果と言え、まさにショッピング外部性の存在を示す結果と言える。

売り上げ向上の理由が
「ついで買い」なのかさらに検証

 しかし、エリアの多様性が売り上げにもたらす効果は必ずしもショッピング外部性によるものだけではないかもしれない。