そのように考えると所得の高い人、例えば、時給1万円の人であれば、1時間の通勤には1万円という非常に大きな機会費用がかかるのである。

タワマンのターゲットは
所得の高いパワーカップル

 このような、通勤に関する機会費用がある場合、高所得者は機会費用の意味で極めて高い通勤費用を支払うことになるため、都心から離れるにつれて急激に通勤費用は高まり、それに伴い満足度は急激に減少していく。つまり、付け値地代が都心からの距離に従って急速に減少する。

 一方で、その他の人は相対的に機会費用も含めた通勤費用が小さいため、付け値地代の減少はなだらかになる。

 したがって、図1にもあるとおり、両者の付け値地代を比較すると、都心近くでは高所得者の付け値地代がその他の人を上回り、どこかの地点で交差して逆転する。

図1:異なる所得層の付け値地代曲線同書より転載

 地主は付け値地代の高い方に土地を貸したいと考えると、都心部では高所得者が、都心から離れた外縁部にその他の人が住むというリング状の住み分け構造がこのようにして生じるのである。

 特に共稼ぎ家計については通勤費用は倍になる。タワーマンションは、このような通勤の機会費用の高い人々のために、都心近くに住宅を提供しているのだと考えられる。

街に何を建てるかは
住人と企業のせめぎ合い

 このように、通勤の機会費用によって都心部では高所得者層が集まることが明らかになってきたが、では、なぜオフィスビルではなく、タワーマンションが建ったのだろうか。

 ここまでのモデルでは、勤務地が、都市の中心に点のように存在する状況を想定していたが、実際には都心のオフィス街や商業施設は広がりを持っている。