一方で、そこから少し離れたエリアでは、集積の経済が少し弱まるため、住宅需要が比較的強くなる。なかでも、中心部への通勤時間を高い賃料を払ってでも短くしたい高所得者層のためのタワーマンションが建設されるということになるのである。

 都心の土地をオフィスに使うのかタワーマンションに使うのかは、どちらの用途がより高い賃料を払うことができるのかに依存するはずである。

 さらにその時代の経済環境の変化によってそれぞれの用途が支払うことができる賃料は変化するため、オフィスからタワーマンションへ、あるいはタワーマンションからオフィスへと景観が変化する可能性がある。

『歩いて学ぶ都市経済学』書影『歩いて学ぶ都市経済学』(中島賢太郎、手島健介、山崎潤一、日本評論社)

 Xu(2023)(注3)は、日本のデータを使ってこのようなオフィスと住居の土地用途の変化について分析した研究である。

 都心部におけるオフィスビルへの需要は景気変動の影響を大きく受けるのに対し、住宅需要は相対的に安定している。

 したがって景気上昇期は都心においてオフィスビル需要が住宅需要を上回るのに対し、景気下降期はそれが逆転する可能性があるのである。

 実際にXu(2023)では、バブル期に都心部の新規住宅着工件数が減少し、バブル崩壊後それが増加に転じたこと、またそれに伴い都心人口が増加したことなどを示している。

 このように、経済環境の変化によって、オフィス需要と住宅需要のバランスが変わることで、都市の景観は移り変わるのである。

(注3)Xu, Hangtian(2023)“Commercial-to-residential Land-use Conversion and Residential Recentralization in Large Cities,” Canadian Journal of Economics, 56(1), 306-338.