また、少し都心から離れると、商業ビルの隣にマンションが建っていることもよくあるだろう。つまり土地の利用は誰がどこに住むかという住人間のせめぎ合いだけでなく、タワーマンションとオフィスビルのどちらを建てるかという住人と企業との間のせめぎ合いによっても定まるものなのである。

 このような職住が入り交じった実際の土地利用のあり方を考えるためには、勤務地を提供する企業の立地に関する意思決定をモデルに取り入れる必要がある。

 企業は、都市住人と同様に土地を借り、都市住人を雇用して生産を行う。また、企業には集積の経済(編集部注/特定の地域に多くの企業や産業が集中することで、経済的なメリットが生じる現象)が働くため、企業同士で集まった方が生産性が高くなる。

 一方で、都市住人には通勤費用があるのでできるだけ通勤距離は短い方が望ましく、遠くにある企業には通勤しない。

 この場合、通勤費用が十分に低いと、企業は都心部に集中し、集積の経済を十分に発揮させることで労働者にも高い賃金をオファーし、周辺に居住する住人はそれに引きつけられて郊外から都心部まで通勤するというAMMモデルが想定する単一中心都市の構造が生まれることになる。

 一方で、集積の経済が相対的に弱く、通勤費用が高い場合、住人は遠くへの通勤を好まないため、都市内に複数のビジネス街区が生じたり、あるいは職住が混在する地域が生じたりする。

 このようなモデルはFujita and Ogawa(1982)(注1)によって提案され、Lucas and Rossi-Hansberg(2002)(注2)によって一般化がなされた。

 このモデルによって都市における土地利用の状況を、企業を含めた都市における主要な意思決定者のせめぎ合いの結果として描けるようになったのである。

タワマンの需要が高まるのは
景気が冷え込んだとき?

 このようなモデルを下敷きに考えると、丸の内のような東京の中心部には、大きな集積の経済が働き、高い賃料を支払うことのできるオフィスビルが建つことになる。

(注1)Fujita, Masahisa and Hideaki Ogawa(1982)“Multiple Equilibria and Structural Transition of Non-monocentric Urban Configurations,” Regional Science and Urban Economics, 12(2), 161-196.
(注2)Lucas, Robert E. and Esteban Rossi-Hansberg(2002)“On the Internal Structure of Cities,” Econometrica, 70(4), 1445-1476.