貸出金が2割以上も
増加した1位の銀行は?

 上記の背景は、地銀・第二地銀各行に、融資取引を拡大させようとする動機をもたらした。その結果、前回記事の預金編の図表1で示したとおり、96行ベースの(融資取引の勘定科目である)貸出金の伸びは、預金+譲渡性預金の1.66%を上回る4.18%となった。

 その貸出金の残高を各行別に算出し、24年9月末時点との残高比の伸び率順に並べ替えてランキングを作成した[図表2]。既述のとおり、青森みちのく銀行は24年9月末時点の残高が確認できないため、欄外とした。

 96行中で残高を増加させたのは88行となり、全体に占める比率は91.67%に達した。上位5行の伸びは1割超となった。

 相対的に規模が小さいため比率が変動しやすい第二地銀が下位に集まる動向がみられ、10位までに入った第二地銀は、最大手の北洋銀行を含め3行となった。よって全体としては、大手地銀が店舗網や規模のメリットを活かして融資取引の拡大を図り、第二地銀以上に数字を拡大させた構図が窺える。

 個別の動きでは、1位が石川県の北國銀行となった。2割超の増加率は驚異的だ。同行は、23年9月末から24年9月末までの1年間に貸出金を1.97%減少させたため、反動増分が反映されたことだろう。いずれも24年元旦に発生した能登半島地震の影響と見込む。

 同行は、24年9月からの1年間に5155億9000万円貸出金を増やしているが、業種別の内訳では、そのうち43.09%に当たる2221億8500万円を地方公共団体向けが占める。平均伸び率の4.18%に最も近い4.13%の伸び率となった阿波銀行(34位)の増加額に占める地方公共団体向けの比率はわずか1.75%に過ぎないため、違いは大きい。

 そうした需要に応じた結果、同行の地方公共団体向け貸出金は1年間に70.23%増えた。営業地区内の自治体などから寄せられた復興資金需要に、積極的に応じたとみられる。

 2位は、栃木県の栃木銀行となった。増加した3573億5100万円のうち、地方公共団体向けの増加分が53.73%の1920億2200万円を占める。相対的に規模の大きな足利銀行の同時期の国・地方公共団体向け増加分が134億3600万円に過ぎないことを踏まえれば、その14倍超に達する驚異的な増加額だ。地方公共団体向けの融資には入札形式が多いため、低金利による落札を積極化させた可能性もあろう。

 さらに、不動産業・物品賃貸業向け融資でも、増加額の14.33%にあたる512億1800万円を伸ばしている。先に挙げた地方公共団体向け分の増加額と合わせれば、その占有率は全体の四分の三超に達する。

 同行の25年3月期の決算説明会資料には、営業エリアのマーケットのうち埼玉エリアを「不動産需要が高くPJ(プロジェクト融資)・融資などの資金需要も旺盛」と分析している。同行の埼玉県内店舗は。店舗内店舗形態を含め、全83店舗中16店舗を占める。

 24年10月1日現在の人口推計で、対前年比で人口を増やした都道府県は、東京都(+0.66%)と埼玉県(+0.01%)に限られる。こうした実情を鑑み、埼玉県内の賃貸アパート・マンションなどの収益物件の資金需要に同行が積極的に応じた可能性を見込む。