地方銀行は軒並みPBRが低く、時価総額が小さい地銀の上場意義が問われ続けている。さらに金利ある世界が到来し、ある指標に株主の注目が集まっていることが分かった。その指標で「ワーストランキング」を作成すると、金利ある世界で上場廃止の危機に直面する地銀が浮かび上がる。特集『上場廃止ラッシュ2025』(全11回)の#8で、その詳細をお届けする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
機関投資家の投資対象に入らず
地銀で問われる上場の意味
東京証券取引所の市場改革以前から問われている問題がある。地方銀行の上場意義だ。
上場している地銀73行のうち、株価純資産倍率(PBR)が企業の解散価値である1倍を超えているのは、優先株の影響で異常値が出ているじもとホールディングスのみ。PBR1倍を割り込むどころか、7割以上の地銀が0.5倍割れという惨憺たる状況だ。
問題はPBRだけではない。金融セクターに特化したファンドを運営するありあけキャピタルの田中克典代表が指摘するのは、時価総額が小さい地銀の上場意義だ。
例えば、地銀最大手の横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループの時価総額は、2024年12月末時点で1兆0171億円である。
一方、同じくプライム市場に上場する東和銀行(群馬県)は同238億円、北日本銀行(岩手県)は同266億円と、プライム市場の地銀間でも、時価総額に相当大きな差が開いている。「プライム市場は、グローバルの機関投資家と対話が求められる市場と定義されている。だが、実際には多くの地銀が、時価総額が小さすぎて機関投資家の投資対象から外れているのが現状だ。時価総額が小さい企業は、銀行名を維持した上でホールディングスの傘下に入り、一定の時価総額があるホールディングスとして機関投資家と議論し、企業価値向上を目指すのも一つの方向性と言える」(田中代表)。
地銀が株主から目を付けられる課題は他にもある。大量に抱える政策保有株だ。
京都銀行を傘下に持つ京都フィナンシャルグループ(FG)(京都府)や八十二銀行(長野県)、滋賀銀行(滋賀県)など、政策保有株の多い地銀の主要株主リストに23年に突如として名を連ねたのが、英投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズ(AVI)だ。
AVIの坂井一成・日本調査責任者は「23年の地銀株は、今よりもさらにPBRが低い水準にあり、投資魅力があった。その後株価が上昇したため、AVIは1年で地銀株を全て売却した経緯がある。今後、再び地銀に積極的に投資するとすれば、政策保有株の聖域なき売却を掲げる地銀が出たときだ」と話す。
そこで次ページでは、アクティビストに目を付けられがちな、政策保有株が多い格安地銀ランキングを作成。政策保有株の連結純資産比率が高く、PBRが低い地銀を総合得点順に並べた。すると、現在はアクティビストのターゲットになっていないものの、「いつアクティビストの投資対象になってもおかしくない」と関係者が明かす地銀がトップに浮上した。
さらに金利ある世界の地銀業界で、別の新たな指標が株主からの注目の的になっていることを明らかにする。その指標のワーストランキングを直近2年半の財務データを基に作成すると、再編の波にのまれやすく、上場廃止危機にひんしている小規模地銀が浮かび上がる。