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M&A(企業の合併・買収)の件数は近年、増加傾向にあり、2024年に過去最高を更新した。スタートアップのみならず、事業承継としてのM&Aも増加の一途だ。一方で、M&Aの件数増加に伴い、これに関連するトラブル(紛争)も増加している。連載『富裕層必見! 資産防衛&節税術』の第6回では、紛争事態が生じることがないよう、M&A実行前の段階でよく問題となる場面と、“売り主”側の対策・注意点について解説する。(岩崎総合法律事務所代表弁護士・シニアプライベートバンカー 岩崎隼人)
拡大するM&A市場の陰でトラブルも増加
M&A取引における「思わぬ落とし穴」とは?
M&Aの件数は近年増加傾向にあり、2024年に過去最高を更新した。スタートアップのみならず、事業承継としてのM&Aも増加の一途をたどっており、25年においてもその勢いは続いている。
一方、M&Aの件数増加に伴い、これに関連するトラブル(紛争)も増加している。トラブルが増加している原因として、主に以下のような事情が考えられる。
・取引の多様化、中小企業のM&A増加に伴う、専門性や知識レベルの不足した当事者の関与。これは契約当事者に限らず、仲介業者の場合もあり得る。
・ポスト・コロナ、インフレなど外部環境変化による業績変動。
買い主・売り主間だけでなく、仲介業者との間のトラブルについても増加傾向にある。中小企業庁では、この問題に対処するため、26年度中にもアドバイザー資格の制度を創設する方向で議論が進められている。
トラブルに発展するケースとして、以下のような事例が挙げられる。
・価格調整に関する争い(アーンアウト条項)
・後発事象の発生(MAC条項)
・表明保証違反(偶発債務の発覚、COC条項による重要な契約の終了など)
これらのトラブルは、「実行前のリスク評価と契約交渉の甘さ」に起因して発生することが多いのが実情である。
売り主の方においては、「売却後の責任(補償)」に十分な意識が向いておらず、その結果、実行後にトラブルに苦しむケースも散見される。
身を賭して会社を成長させたにもかかわらず、適切な対策を取らなかったが故に、思わぬ結果を招くこともある。こうした事例を当事務所でも多く目にしている。
次ページでは、上記のような事態が生じることがないように、実行前の段階でよく問題となる場面と、これに対する売り主側の対策・注意点について解説する。M&Aを考えるオーナーは、ぜひ読んでほしい。







