コメダの「逆張り戦略」は
極めて合理的である

　私たちは、こうしたコメダの戦略から何が学べるでしょうか。

・　誰もが座席回転率を追うときに滞店時間を延ばし、「地域のリビングルーム」を目指す
・　誰もが売上連動型ロイヤリティを採用するときに、定額制を選ぶ
・　誰もが飲食業と考えるときに、製造卸売業として再定義する

　コメダの経営には、業界の「常識」を疑う勇気と、「逆張り」の戦略を支える徹底した合理性が存在していることがわかります。

　これらの「逆張り」は決して思いつきではありません。

　長居を前提とした店舗設計は顧客単価を上げつつ、全時間帯の需要平準化で回転率も向上を図っています。一方、定額ロイヤリティは店舗のやる気を引き出すとともに、コンパクトな本部運営を可能にしています。そして製造卸売業モデルは、製造の内製化による品質管理と原価コントロールを両立させています。

　これら全てが有機的に結びつき、営業利益率18.7％という驚異的な収益性を生み出しているのです。

　コメダホールディングスは、一見するとレトロで牧歌的な喫茶店チェーンに見えますが、その内部には合理的な収益メカニズムが内包されています。

「優れた戦略は、一見すると非常識に見えるが、深く理解すると極めて合理的である」――コメダの戦略は、まさにこの言葉を体現しています。

　業界の常識に挑戦するとき、重要なのは単なる差別化ではなく、その背後に揺るぎない合理性があるかどうか、ということをコメダはあらためて教えてくれています。