【事例②】
化学系素材メーカーの経営幹部Bさん
「執念で未来を切り開く経営幹部」
化学系素材メーカーの経営幹部Bさんは、主力事業の立て直し・復活の命を受けて経営幹部に抜擢されました・売上が横ばい、利益は減少傾向で、なんとか黒字を確保しているという状態です。抜擢直後、その事業では新素材の開発に成功。量産可能な状態にこぎつけますが、ここで難題に直面します。
量産設備=プラント建設が必要になり、投資金額を試算しても、数十億~100億円近い投資が必要だったのです。会社は「主力事業がいつかは終わる!次の柱を!」と掲げていました。しかし、既存事業が黒字を維持しており、いくばくかの猶予があったため、他の経営幹部は量産に対して首を縦に振りませんでした。新素材量産の話は頓挫しかけます。
Bさんは他の幹部をがむしゃらに説得し続けました。結果、5年での累積黒字化の責任と引き換えにプラント建設を勝ち取ります。そして8年かけて累積黒字を達成し、企業にとっての次の柱となる事業へと成長させたのです。
当時を振り返り、Bさんは「結果を出さないと、先輩たちが20数年間必死でつくり守ってきたこの事業がなくなってしまう。自分がやっている間に潰すことだけは絶対にしたくはなかった」と語っています。
厳しい現実に直面させればいいというわけではない
経営者としての「覚悟」を生み出す3要素
さて、この2つの事例から見えてくる「覚悟」醸成のポイントは何でしょうか。
先述の例をみると、Aさんは期待をされて幹部に抜擢されましたが、その現実はかえってAさんを苦しめることになりました。人材に余裕のある大手企業以上に、人材に限りある中小企業では、せっかく任命した後継者候補が活躍できない状態は避けなければなりません。厳しい現実に直面しても逃げずに立ち向かってもらうには、予め本人の中に「意欲」「覚悟」を醸成しておくことが必要になります。そのために重要なのが以下の3つの要素です。
① 「自分らしさ」への実感を持ってもらうこと
経営幹部候補自身が自分の強みや持ち味を自覚し、それに対する自信を持っていることが重要です。「そんなことが大事?」と思うかもしれませんが、先述の事例のAさんは、他の幹部と比較して自分らしさを見失ってしまいました。







