著名な経営者を思い浮かべてください。多くの人は「わがまま」にも思えるほど、自分の軸を持ちながら経営しています。正解が分からない中で決断する際の最大の拠り所は、“自分がその決断に後悔しないかどうか”。その意味で、自分らしさに実感をもつことは経営幹部になるためのスタートラインと言えると思います。

② 「仲間からの期待や信頼」を実感できること

 Aさんは周りの経営幹部から自分という人間を認めてもらえたことで感じていることを発言できるようになりました。それをきっかけに、大きな意思決定をしていける人材に成長していったのです。

 悩んでいるとき、迷っているときに、「それでいいんだ」「期待している」という仲間の言葉が決断・意志決定の最後のひと押しになることは少なくありません。経営は一人ではできません。「自分を信頼し、共に困難を乗り越える仲間がいる」という実感は、「覚悟」を固める上で非常に大きな要素となります。

③ 「会社への愛着・こだわり」を再実感できること

 Bさんの投資決断の最後の拠り所は“先輩たちが築いてきた事業”への愛着・誇りでした。自社の経営判断を担う経営幹部を育てるうえで、自社・事業に対する誇りは必要不可欠でしょう。

価値は再実感され続けないと
枯れていく

 Aさんにしても、Bさんにしても、外部から「覚悟」「意欲」が与えられたわけでも、強制されたわけでもありません。もともとAさんやBさんの中には経営幹部としての覚悟を醸成するに足る体験・経験があったのです。しかし、その価値が再実感・再創造されないことで、経営幹部としての覚悟・意欲を見失っていきました。

「価値あるものは再実感され続けないと枯れていく」

 どんなに大事・重要だと思っていることでも、繰り返しそれが「大切である」「必要である」と再実感されていくことが肝心なのです。だからこそ、経営幹部候補の育成にあたっても、まずは、その人の中に、「覚悟」「意欲」の醸成につながる体験・経験=可能性の芽が必ず隠れているという前提にたって候補者と接することから始めてみてほしいです。

(リクルートマネジメントソリューションズ コミュニケーションエンジニアリング部 エグゼクティブコミュニケーションエンジニア 河島 慎)