1980年代に「デートカー」として人気を博したホンダ「プレリュード」が、24年の時を超えて令和に復活した。歴代プレリュードは、アコードをベースにしたスペシャリティクーペだったが、新しいプレリュードは、シビックがベースになっている。
プレリュードのLPL(Large Project Leader)、つまりプレリュードの開発チームのリーダーである山上智行さんは、プレリュードの前はシビックを担当していたこと。そして最初から「プレリュードを復活させよう!」ではなく、「市場環境が激変し、クルマの電動化が急速に進むこの世の中で、ハイブリッドでホンダのスポーツカーをもう一回やろう」というコンセプトで開発がスタートしたクルマだった……というのは、インタビュー前編、中編でお伝えした通りだ。
ここからは引き続き、山上さんのお話を聞いていこう。
24年ぶりに復活した、ホンダ「プレリュード」 Photo by F.Y.
このクルマのヒントを得たのは、世界最古のお茶の専門書からだった
本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部 LPL室 LPL チーフエンジニア 山上智行さん(以下、山):このクルマを企画していたのは、ちょうどコロナ期間中で……。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):あぁ……。
山:何かと大変な時期だったんです。打ち合わせも思うようにできないし……その代わり、割と時間があったので、図書館に通っていろいろと調べ物をしていました。その時に出合ったのが中国のお茶の本です。お茶の「茶」に、経済の「経」で「茶経」という本。
唐の時代の世界最古のお茶の専門書で、「どのようにつくり、どのように淹れ、どのような心で味わうべきか」ということが、思想と技術の両面から体系的に書かれている。面白いのは、味の優劣を競うのではなく、「茶」という行為そのものを、自然観や美意識と結びつけていることです。
F:はぁ。古い中国のお茶の本ですか。なんかクルマにはあまり関係がなさそうな……。
山:一見何の関係もなさそうなところに、意外とヒントが隠されているものなんです。例えば「飲んですぐに分かるものは本物ではない」とか、「銘柄や値段に惑わされるべきではない」とか。プレリュードの装備やデザインを削ぎ落としながら造っていったのは、その本から着想を得た部分が大きいんです。
F:その結果が1460キロという車重ですね。プレリュードは、あの大きさからすると、とても軽い。







