高級車なのに、装備やデザインを削ぎ落として造った

山:相当軽いと思いますよ。いろいろ削ぎ落としていきましたから。高級車だと思って買ったらパワーシートが付いていないとか、当然パワーテールゲートだろうと思って室内のトランクのボタンを押し続けているのに、ロックが解除されるだけでウィーンと開かないとか。サンルーフもありませんしね。

F:それらは全てオプション設定なんですか?

山:いや、オプション設定もないです。重くなりますし、サンルーフを付けちゃうと、ルーフが今みたいなきれいなラインにもできませんし。中途半端にやるくらいなら、もう思い切ってやめてしまえと。デザイン、ダイナミクス、スペシャリティ。この3つを天秤にかけて、切るものは切ったということですね。

プレリュードは横から見ても美しいプレリュードは横から見ても美しい(広報写真)

F:クルマに関しては、「軽さは正義なり」という面がありますからね。軽くすれば燃費も走りも良くなるわけですし。今回のプレリュードは、デザインもさることながら、「走り」に関しても相当にこだわっていると伺いました。

 実際に試乗して驚いたのは足回りです。接地感がとても良い。千葉のワインディングで飛ばしたのですが、かなりの速度でコーナーに入ってもタイヤが鳴かないんですよね。

山:それはタイヤをうまく接地させている証拠です。タイヤの接地面は、はがきぐらいの大きさです。それがコーナーに入ると遠心力がはたらいて、どんどん三角形に小さくなっていきます。それを避けるために、フロントのキャスター角度(※)を8度ほど付けています。

 そうするとハンドルを切った時にキャンバーが付いて、踏ん張る方向にサスペンションが動いてくれる。これはシビックのTYPE-Rと同じ角度です。タイヤが鳴かないだけではなく、タイヤの摩耗も抑えられます。濡れた路面でも安心して走っていただけます。

※キャスター角:前輪の操舵軸が後方に傾いている角度のこと。この角度があることでコーナリング時には舵角に応じて前輪にキャンバー変化が生じ、外輪が路面に押し付けられる。結果、タイヤの接地性が高まり、コーナーでの安定感が増加する。一方で低速時にハンドルが重くなり、路面からの入力が増えやすく、キックバックや轍(わだち)の影響を受けやすくなる。

FRという選択肢はなかった

F:FRにしようという議論はなかったのですか?走りにこだわるのであれば、やはりFRというイメージがあるのですが。

山:ないですね。FRやミッドシップという選択肢は最初からありませんでした。先程お話しした通り、我々がいま持っている技術と素材で、可能な限り短期間に仕上げようという命題がありましたから。

 そもそもホンダはFFのパッケージが強みの会社でもありますし。動的性能で言っても、駆動方式の言い訳なんて必要ないくらいに引き上げられたと思っていますので。

F:それは乗ってよく分かるのですが。とはいえ良くないですか?FR。