夜の駐車場で出会った新しい顔

 ふだんは昼に受け取る試乗車を、今回は珍しく仕事帰りの夜に受け取った。

 だからX3との最初の対面は、ショールームの均質な光の下でも、昼の強烈な自然光の下でもない。LEDの光がまばらに点る駐車場で、ほぼ素の状態のX3と向き合うことになった。いつも通りクルマの周囲を一周する。

夜の駐車場でX3を受け取った夜の駐車場でX3を受け取った Photo by Ferdinand Yamaguchi

 昼間なら面の抑揚やプレスラインに目が行くはずだが、夜は違う。暗がりの中では輪郭が先に浮かび上がる。キドニーグリルの縁取り、ヘッドライトのシグネチャー、そしてボディの幅を意識させる水平基調の光。前モデルのX3が持つ佇まいとは明らかに方向が違う。

“SUVとしての”存在感を、造形だけでなく“光の使い方”で前面に出した印象だ。ドンと押し出しの効いた、岩を切り出したような存在感。

 近年のプレミアムSUVのデザインは、電動化の進行と歩調を合わせるように、表情を抑え、面を整え、「静かに新しい」方向へ進んできた。一方で新型のX3は、光を使い、輪郭を際立たせ、夜の視界の中でクルマの存在をはっきりと主張している。流行に乗るよりも、BMWがこのクラスに求める役割を宣言するようなデザインだ。

 大黒柱であるならば、デザインは保守的にまとめるのが常道だろう。だがX3はあえて逆目に張った。暗い場所でも一目で新型と分かる顔面を与え、SUVとしての押し出しを光で補強する。冒険的にも映るが、実は狙いは現実的。その「分かりやすさ」は、X3の立場を考えれば、合理的と言えよう。

 ドアを開けて車内に入る。ドアトリムからダッシュボードにかけて、途切れずに走るライティングが目に入る。従来のアンビエントライトのように、空間を和らげるための背景照明ではなく、インテリアの輪郭を整理し、どこがクルマの中心線なのかを視覚的に示すための光だ。車外で感じた「岩を切り出したような量感」は、ここでは線と面に分解され、理路整然と再構成されている。