地域社会が学生を育て、学生が地域を育てる
鴨谷さんは、女性支援をテーマにした修士論文を書き上げ、修了後は、さらに活動の強度を上げ、現在は兵庫県の男女共同参画を草の根から支える中堅の一人として活躍している。鴨谷さんの活躍は、卒業生が大学と地域社会をつなぐ役割を果たしていることを如実に語っているように思う。
鴨谷さんが大学と地域社会をつなぐことができているのは、学生時代に築いた人間関係ゆえでもある。学生時代に、地域で活躍する人たちと出会い、地域社会が抱える課題解決の取り組みに関わった経験は、その後の人生の節目で生かされ、長い時間を経て、花開いてきた。
鴨谷さんのこれまでの足跡を振り返ることで、私自身が誇らしい気持ちになった反面、多くの卒業生が神戸に居つくことなく、東京に巣立っていってしまうことが当たり前になった近年の状況を思い起こして、寂しい気持ちにもなった。
そういえば、羽田野さんは、学生たちが地域活動に姿を見せなくなってきたことを残念がっていた。羽田野さんは、「若い人たちは、地域の助けがなくても生きることができるように育てられてきてしまったのではないか?」と語った。羽田野さんは、地域で活躍する立場から、学生たちに地域社会に目を向けることを望み、「学生が姿を見せてくれるだけで、地域社会が明るく元気になる」と力説していた。
私自身、学生たちが地域で生活している人たちとの関わりから学ぶ機会を意識的につくってきた。私の研究や教育のテーマが、異質な他者との間で相互の学び合いが生まれる条件や過程を捉えようとするものということもある。ことさら私は、障がい者との出会いをテーマにしており、私の身の回りにいる学生の多くが、障がい者やその家族との関わりから多くの学びを得ている。障がい者の多くは、住み慣れた家を中心に足場を築いた地域社会の中で、さまざまな社会資源とつながりながら生活を成り立たせている。高齢者や乳幼児と同様、障がい者の生活の多くは地域社会の状況から影響を受けやすい。障がい者やその家族との関係を紡いだ学生たちは、私自身もそうであったように、自ずと地域社会に目を向けるはずだ。
とはいえ、これまで私は、学生が卒業した後にも地域社会に残り、貢献していくことをイメージできていたわけではない。学生たちは卒業したら東京に向かうものだと、半ば諦めの気持ちで卒業生を見送ってきた。今回、私は改めて、鴨谷さんと羽田野さんの地域社会での活躍に意識を向けることで、「もっと、地域社会の発展と卒業生の活躍の両方を視野に入れた取り組みが必要なのではないか?」ということに気づいた。







