養老孟司氏
累計450万部を超えた『バカの壁』から22年。当時の若者たちが企業の中枢を担う現在の日本社会において、これから社会に出る若者はどう生きるべきか、一生を賭けた昆虫標本コレクションを構える箱根の別荘で、2回に分けて養老孟司氏に話を聞いた。(取材・文・撮影/嶺 竜一)
社会的評価を求めず
「自分の好き」を追求せよ
――日本では終身雇用を前提とした働き方から、転職を経てキャリアアップを目指す働き方へとビジネスパーソンの価値観が変化しつつあります。一方で、良い企業に入社して長く勤めたいと考える若者は依然として多いとも聞きます。こうした若者たちの就職観をどう見ていますか。
安定した企業でずっと働きたいと思っている若者は、親が無意識にそうしつけているんでしょうね。教えなくても子どもは親の本音を見て育ちますから。例えば小売店の特売セールに一生懸命な親を見て育った子は、この世の全てのものが商品だと考えるようになる。
大学の講義も彼らにとっては商品だから、シラバス(授業計画書)を作れと言い出し、「来週の何時限はどういう話をしますか」と知りたがる。当日教授の気が変わって、他のことを教えようとしたらどうするのか。学問が生きて動いているとは夢にも思わないのです。
最近はタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する学生が増えているそうですが、効率では人生の面白さは分からない。勉強でも就活でも、汗をかいて苦労することこそが面白いし、そこに醍醐味がある。親が子に苦労を避けさせるような育て方をするのは、よくありませんね。
――今の大学生はボランティアにしても何か活動をするにしても、就職活動のときにそれがどう評価されるかを気にしているそうです。
学生時代から社会的な評価を求めて行動するのはやめた方がいい。若いうちは、他人の役に立つことなど考えない方がいいのです。今の世の中のニーズはその時代限りのニーズでしかないからです。







