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世帯の年間負担1万2400円程度低下も
「円安」が10円進めば約半分の効果に
政府は11月21日、物価高対策、危機管理投資、防衛・外交強化の3本柱からなる総合経済対策を閣議決定した。
一般会計歳出は17.7兆円と石破前政権の際の対策規模13.9兆円を大きく上回り、減税分などを含めると、総額21.3兆円の規模となった。筆者の試算では、今回の経済対策によって実質GDPは1.1%程度押し上げられる。
「強い経済」実現を掲げる高市首相が、物価高対策を当面の「最優先課題」としてきたことや、積極財政路線をアピールするため、対策の規模にこだわったことから、規模を優先した感が強い。
だが金融市場では、財政環境の悪化を懸念し、長期金利の上昇と円安進行が促されている。
高市政権は「責任ある積極財政」を強調し、財政規律に配慮して、長期金利が大きく上昇しない程度に経済対策の規模を抑えたと説明するが、実際には、対策の規模が大きくなるとの観測を強めるなか、長期金利はほぼ一直線に上昇してきた。
また、財政環境の悪化は、国債とともに通貨の信認を損ねることから、円安も大きく進んできた。
21日のドル円レートは10カ月ぶり水準の一時157円台になったが、ドル円レートは自民党総裁選で高市氏が総裁に選出された10月以降、10円以上も円安が進んでいる。
物価高対策の柱は、ガソリン税の旧暫定税率廃止と電気・ガス補助金の2つだ。ガソリン暫定税率廃止によりガソリン価格は1リットル当たり16.6円程度低下すると見込まれる。これは、筆者の試算では、年間の世帯当たり負担額を平均で5400円程度低下させる。
また、2026年1月から3月にかけての電気・ガス補助金は、世帯当たり負担を平均で7000円程度押し下げると考えられ、合計すれば、家計負担額は1万2400円程度軽減される計算だ。
だが一方で、10円の円安による物価高は、2年間で家計の5765円の負担となる計算で、物価高対策の効果の半分近くは、円安によって減じられてしまう。
高市政権は物価高対策を最優先としているが、規模を優先するほど円安が進み、その効果が相殺されてしまうというのが、高市政権の経済政策が抱える大きな矛盾だ。







