経済安全保障推進会議で発言する高市早苗首相(左)経済安全保障推進会議で発言する高市早苗首相(左)=11月7日、首相官邸 Photo:SANKEI

目指す「強い国、強い経済」実現は可能か
経済安全保障はミクロ、マクロ両面で変化

 高市新政権が発足、国会では首相の掲げる「強い国、強い経済」実現の政策などを巡る議論が始まっている。

 高市首相は2022年8月から24年10月まで経済安全保障担当相を経験していることもあり、経済安全保障重視の姿勢が鮮明だ。担当相在任中には、経済安全保障に関する書籍『日本の経済安全保障――国家国民を守る黄金律』(飛鳥新社刊、2024年7月)も出版している。

 その主張は、22年5月に成立した経済安全保障推進法の考え方や内容と一致する。

 だが、経済安全保障に関しては、ここ数年でミクロ・マクロの両面で変化が起きており、先行きを見通すのが難しくなっている。

 例えば、ロシアの侵攻で今も続くウクライナでの戦闘では、通信・偵察・無人機・サイバー防衛などの分野で、スタートアップ企業が提供した技術や装備が戦術や作戦に大きな影響を与えている。

 基幹産業やインフラ産業を担う大企業や政府主導の技術開発や装備生産では時間がかかりすぎるのに対して、例えば、ドローン供給に象徴されるように、低コストで高品質で多様な使い方や柔軟に対応ができるなど、経済安全保障は、もはや大企業中心の概念ではなくなっている。

 またサプライチェーンの自国化や希少資源囲い込みのように、一国主義の経済安全保障も目立ってきた。

 高市首相は、「危機管理投資」を経済安全保障の柱に打ち出し、AI・半導体やサーバーセキュリティー、エネルギーなど17の「戦略分野」での官民での投資拡大などを掲げる。また訪日したトランプ大統領とも信頼関係構築や日米の同盟関係強化で合意しているが、新たな経済安保の状況への対応も求められる。