えみるさんには妹がいて、今年20歳になる。アメリカの4年制の高校に通うため、留学したいと言った時、しんごさんは賛成した。えみるさんには「まだ早い、中学に入ってから」などと理由をつけて、止めたことがいくつもあった。
だから、やりたいことは生きているうちにやってほしいという思いが強くある。
妻もついていってふたりは留学先のロサンゼルスで暮らしてきたが、しんごさんも23年に家族のもとへ渡った。「還暦という節目でもあり、日常会話ができるぐらいに英語を勉強したいと思っています」。
幸せとは、当たり前が当たり前にあることだと思う。「いってきます」があれば、「ただいま」があること。そんなささやかなこと。
「いっぱい幸せがあったのに、素通りしてきたんですね。えみるが天国から気づかせてくれたんだな」
息子と3泊の沢登り
それが最後の記憶となった
「みなさんと同じ年ごろで私の息子は亡くなりました。親子であり、仲間でもあった。敬愛する人だった」
大阪府吹田市の会社経営者、横山正和さん(63)は2022年3月17日、追手門学院高校(同府茨木市)で体験を話した。
国語教諭として以前勤めていた同校で医療・看護系を目指す2年生に向け「いのちについて考える授業」を頼まれた。くしくも19歳で亡くなった長男弓弦さんの33回目の誕生日だった。
弓弦さんは東京大学2年生だった2008年9月、夏休みに友だちと東欧を旅し、スロバキアのドナウ川で川遊び中に流された。行方不明という電話が大使館からあり、横山さんは現地へ飛んだ。
自転車で河畔を捜し回った。8日目の夕方、たまらず川岸で「弓弦!」と呼んだ。すぐ後、対岸で遺体が見つかったと知らせが入った。
声が届いたんだな。一緒に日本に帰ろう。水の中でどんなに冷たかっただろう。ホテルであったかいうどんを息子の分と2杯作り、喜んだ。







