また彼は、「中国経済は不景気だと聞いていたが、訪れた場所には多くの人で溢れており活気があった。台湾・香港、また日本よりもスケール感が大きく、華やかさを感じた」とも話していた。

 中国で暮らしている日本人はどう感じていたのだろうか。10年以上上海で仕事をしている日本人女性に、「今回の件で何か影響を受けているのでしょうか」と質問したところ、「まったく変わりがないです」との答えだった。

中国人は今回の状況をどう思っている?

 日中関係が悪化し、日本のSNSでは「中国へなど行くものか」「在中邦人の身の安全が心配」「政府は中国への渡航中止をすべきだ」などの声もある中で、実際には多くの日本人観光客が中国を訪れている。その一方、中国人は日本への足を止められている状況だ。この状況を中国人はどう思っているのか。

「もう振り回されなくなってきた」と話すのは、上海で福祉機器メーカーを経営する男性だ。

「“日本への渡航を自粛せよ”、これまでこのような手を、もう何回使われてきただろう。何か問題が起きるたびに、日本を引っ張り出して標的にし、歴史的な怨恨を拡大する。逆に関係を改善すると、今度は”歴史を鑑とし、未来に向かおう”と言い換える。正直なところ、もう以前のように(政府に)振り回されなくなってきた。なので、特に何も思うことがない」

 大学で教鞭をとる知人は、次のように話す。

「日本への旅行は、あくまでも個人の自由であり、愛国かどうかと結びつけられるべきではないと思う。日本が好きな人は、政府の呼びかけがあっても旅行を中止しないし、もともと行きたくない人は、どんなに勧められても行かない。結局、人の考え方はそれぞれなのだから、みんなわが道を歩けばいい。

 今は、教育現場でも言いたいことをなんでも言える環境ではなくなっている。それでも学生たちには『自分の頭でしっかり考えて、安易に世論に流されないように』と、いつも言い聞かせている」

 日中関係が冷え込む中でも、現地の多くの人々は感情に流されることなく、自分自身の判断で行動しようとしている――そんな印象を受けた。これまで対日感情が政治的に利用されてきた構造や、いまだそれが繰り返されていることについて、多くの中国人はすでに理解しているし、冷静に考えている。インターネットが発達した今日では、情報を多角的に入手できるので、「簡単には踊らされない」という意識が、静かに社会に根づき始めているのかもしれない。