日本の状況も中国と似たようなもの

 残念ながら、このような現象は日本にも当てはまる。このところ、日本のネット上でも、「中国人はもう来なくていい」「来ないほうが日本は静かで快適だ」といった声が目立つ。おそらく、このような発信をしているのは一度も中国に行ったことがない人たちだろう。

 しかし、現実には、来日する中国人が一人でも増えれば、対日感情が改善され、日本が好きになり、結果として日本の”味方”が増える。こうした例を、筆者は仕事関係でこれまでたくさん見てきた。

 隣国同士である以上、政治的対立があったとしても、引っ越すことはできない。だからこそ、最終的に関係を支えるのは人の往来であり、民間レベルの交流である。人と人まで断絶してしまったら残るものは何もない。

高市発言の背景は中国で知られていない

 今回の日中関係が悪化した原因は、高市首相の「台湾有事は日本の存立危機」の発言にある。ただし、この発言は高市首相が自発的に行ったというより、国会での議論の中で引き出された発言であることは、中国ではほぼ報道されていない。

 今回、中国で話を聞いていると、日本の立場に一定の理解を示す親日的な人々でも、「台湾問題は中国政府にとって最も敏感で重視される内政問題であり、発言は“レッドラインを越えた”」との認識で一致していた。

 政治家は国全体の影響を見据えて慎重に発言すべきだ。現地では、「今回の発言は拙速で、政治家としての成熟さに欠ける」と受け止める声が大勢を占めていた。もし高市首相が表現を抑えていれば、今のような事態は避けられたのかもしれない。

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