ところが、今は欧州・ロシアだけでなく、遂に米国でも「反ユダヤ主義」的風潮が復活しつつある。それに連動してか、各国の対イスラエル外交にも、微妙ながら、確実に変化が生まれている。

古代ギリシャ・ローマ時代から
ユダヤ人は軽蔑・嫌悪されていた

 以上を前提に、欧州から見ていこう。あまり古い話をしても仕方がないとは思う。だが、歴史を振り返れば、欧州における「反ユダヤ主義」は、古代から現代に至るまで、一貫している。原因は、宗教的、経済的理由に加えて人種的偏見も絡んでおり、複雑かつ重層的だ。欧州の「反ユダヤ主義」は実に根深く、一朝一夕では解消など極めて難しい問題なのである。

「反ユダヤ主義」は必ずしもキリスト教の産物ではない。キリスト教誕生以前の古代ギリシャ・ローマ時代から、ユダヤ教の一見排他的な信仰や習慣は既に軽蔑や嫌悪の対象となっていたからだ。

 中世になると「反ユダヤ主義」はキリスト教の神学的教義と深く結びつき、組織化されていく。「イエス・キリストを殺害した」ユダヤ人の流浪・離散は神の「懲罰」であるとされた。居住地、職業、服装などにも法的制限が設けられていったのだ。

 その後は疫病、飢饉(ききん)、戦乱などで社会不安が高まる度にユダヤ系は批判された。反ユダヤ暴動(ポグロム)や虐殺が頻繁に発生する。スペイン、イングランド、フランス等多くの欧州諸国でもユダヤ系の追放が続いたという。

 更に、ユダヤ系には「貪欲な悪徳商人」という偏見も加わった。当時キリスト教徒には禁じられていた「高利貸し」業を営む者が少なくなかったからだ。正にシェイクスピアの『ベニスの商人』の世界である。

「反ユダヤ主義」はエスカレートし
ついにナチスのホロコーストに至る

 啓蒙(けいもう)思想の下で宗教的寛容さが重視された近代に入っても、「反ユダヤ主義」は逆に増幅されていった。19世紀以降、ユダヤ系は「劣った人種」であり、「真の国民」ではなく「国民としての忠誠心もない」などと批判された。