称賛を意図的に増やして
叱責とのバランスをとろう

 一方で、叱責の効果についてはどうでしょうか。叱責は内発的動機を下げるといった副作用も懸念されます。カルダレラ氏らの研究においても、叱責の多さがパフォーマンスを向上させるという明確な結果は示されませんでした。

 研究チームは、このような称賛の効果が生まれる理由として、次の3つの要因を指摘しています。

○価値の実感:称賛は、メンバーに「自分の行動や貢献が組織にとって意味がある」と実感させます。自分の仕事が認められる経験は、「自分は組織に価値をもたらす存在である」という認識につながり、さらなる貢献意欲を引き出します。

○行動の明確化:称賛には、組織が期待する行動を指し示す機能があります。「どのような行動が評価されるのか」を知ることで、メンバーは組織が求める行動や成果のレベルを具体的に理解できます。特に経験の浅いメンバーにとっては、自身が受けた称賛だけでなく、ほかのメンバーが称賛されている場面を見ることも学習機会となります。

○自信の醸成:継続的に称賛を得ることで、メンバーの自信は着実に育まれます。日々の業務で培われた「自分にはできる」という自己効力感は、やがて仕事で出合う困難な課題にも臆することなく挑戦できる、前向きな姿勢を生み出します。

 これらの研究結果と考察は、指導において「叱咤激励」のみに頼ることのリスクを示唆しています。叱責がまったく不要というわけではありませんが、その効果は限定的であり、むしろ副作用も大きいことを踏まえる必要があります。

 メンバーの成長を真に願うならば、称賛の割合を意識的に増やし、叱責とのバランスをとるという方針が、職場におけるより科学的で、有効な育成手法となります。

ホメと改善点の指摘の
理想的な割合は「5:1」

 ポジティブな言葉かけと改善点の指摘は、どのようなバランスで伝えるのが効果的でしょうか?

 ヤングスタウン州立大学のフローラ氏は、職場、家庭、教育といったさまざまな場面におけるコミュニケーションの研究をレビューし、効果的な比率の目安として「ホメの黄金比」を提唱しています(注2)。

(注2)Flora, S. R. (2000). Praise's magic reinforcement ratio: five to one gets the job done. The Behavior Analyst Today, 1(4), pp. 64-69.