なぜなら、度重なる称賛は、相手との間に「心理的な貯金」ともいえる信頼関係の土台を築くからです。その土台があるからこそ、改善の指摘も単なる批判ではなく「自分の成長を願ってくれているからこその言葉だ」と前向きに解釈できます。相手の行動改善をうながしつつ、良好な信頼関係を維持する上で、この「5:1」は効果的な比率だと考えられます。
日々の交流の中で、この比率を意識することで、私たちの観察眼も自然と鍛えられます。相手の良い点を見出そうと丁寧に観察する姿勢は、間接的にコミュニケーションの質を高めることにもつながるからです。「5:1の法則」は、シンプルながら実践的な指針となります。
チームで失敗を乗り越えるときも
「ホメの黄金比」が有効
ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックの比率を「5:1」に保つ「ホメの黄金比」は、個人の成長をうながす上で有効です。
しかし、プロジェクトの失敗や目標未達といった、明らかにネガティブなフィードバックが必要な場面に直面したとき、どうすればよいのでしょうか。無理にでもホメる点を5つ探さなければならないのでしょうか。
この問いに答える鍵の1つは、「ホメの黄金比」を個人へのフィードバック回数としてではなく、チームにおける成功と失敗の「捉え方」の比率として応用する視点にあります。
近年の研究は、チームのパフォーマンスを高める上で「成功は広く、責任は狭く」というアプローチが有効であることを示唆しています。
ペンシルベニア大学ウォートンスクールをはじめとする研究チームは、人は成功時と失敗時で、貢献や責任の所在を異なる方法で捉える傾向があることを明らかにしました(注3)。
大学バスケットボールの試合や企業の意思決定に関する複数の実験で、人々はチームが勝利(成功)した際には、その貢献者をより多く、広く認める傾向がありました。
(注3)Schein, C., Jackson, J. C., Frasca, T., & Gray, K. (2020). Praise-many, blame-fewer: A common (and successful) strategy for attributing responsibility in groups. Journal of Experimental Psychology: General, 149(5), 855-869.






