他者の成功と自身の失敗を目撃することで、参加者たちは「この分野は自分には向いていない」という考えを抱くのかもしれません。「もともと自分には、この種の課題を解決する才能がない」「努力しても無駄だ」といった気持ちが生まれたとしても不思議ではありません。

 能力をホメることは、意図せずして「才能や能力は固定的なものである」という考え方を強化してしまいます。新しいスキルの習得や、困難な課題への挑戦が求められる場面において障壁となる考え方です。

 また、能力ホメには、持続的な成長や挑戦を支える効果もそこまで期待できません。失敗を経験した際には、自信を損なうことを認識しておく必要があるでしょう。

努力ホメを受けた子どもは
失敗したときの落ち込みが大きい

 人がホメ言葉をどう受け止めるかは、その年齢や成長段階によっても変わります。大人と子ども、それぞれの心理的反応について、研究事例を通して理解を深めていきましょう。

 イースタンカロライナ大学のリーヴィス氏らの研究チームは、失敗後の変化に焦点を当てました(注3)。

 アメリカの一般成人を対象に、異なる種類のホメ言葉が失敗後の継続性やタスクの楽しさに与える影響を調べています。

 研究チームは、人物特性に焦点を当てた「努力ホメ」の効果に注目しました。たとえば、「あなたは働き者ですね」といった表現がこれにあたります。

 従来の研究では、子どもに対してこうしたホメ方をすると、失敗したときの落ち込みが大きくなると指摘されてきました。では、大人の場合はどうでしょうか?

 実験において、参加者をグループに分け、それぞれに異なる種類のフィードバックを提供しました。あるグループには「あなたは『知的な人』です」と能力をホメるようなフィードバックを返し、別のグループには「あなたは『働き者』ですね」と人物特性としての努力を、さらに別のグループには「よくがんばりましたね」と努力をホメました。

(注3)Reavis, R. D., Miller, S. E., Grimes, J. A., and Fomukong, A. N. N. (2018). Effort as person-focused praise: “Hard worker” has negative effects for adults after a failure. The Journal of Genetic Psychology, 179(3), 117-122.