うちのチームから、これまで9人のプロ選手を輩出しましたけど、みんなプロに行ったらバッティングフォームが変わるんです。でも、吉田だけは中学生のときと一緒なんです。すでにあの時点で、自分なりに考え抜いたバッティングフォームを身につけていた。

 あの時点ですでに自分の芯を持っていたんでしょうね。芯というのは身体の芯ではなく、心の芯の強さです。それは、他の子どもたちにはないものでした。あの頃から、コーチが何を言おうが、監督が何を言おうが、自分で“これだ”というものがあれば、最後までやり抜く根性がありましたからね」

 中学生時代の吉田がすでに非凡であったことを物語る証言だった。

プロ野球選手になるヤツは
「野球になると別人になる」

 佐々木監督が覚えている吉田の口癖がある。――僕、ホームランが打ちたい。

「あの頃の吉田は、ホームランに対する憧れが本当に強かった。バッティング練習でも、とにかく遠くへ飛ばしたい。身体の大きいヤツに負けたくない。それは僕に、いつも言っていました。“絶対に大きいヤツに飛距離は負けたくない”ということです。いや、飛距離だけじゃないですね。何をするんでも、人には負けたくない。彼の負けず嫌いは相当なものです。普段はクールなタイプなんですけど、同級生といると負けん気が強くなる」

 そして、佐々木監督は「野球になると別人になる」と続ける。

「野球になると別人になるっちゅうか、持って生まれたものかもしれんけど、野球になるとスイッチがパチンって入るんですよ。これ、プロ野球選手になるヤツに多いんです。

 さっきも言ったように、うちのチームからはこれまでプロ選手を9人出しています。9人中6人はスイッチが入りましたね。日常生活ではハチャメチャなヤツもいました。ダラダラしているヤツもいました。だけど、野球になるとバチッと変わる。人が変わるんです。吉田もそのタイプでした」

 そこで鯖江ボーイズでは、吉田だけの「特別方針」を定めた。それが、前代未聞の「ホームランを狙え」という指導である。