【新基準(3)構造・書類】 住宅履歴がない家は「直せない・証明できない」リスク
「安く買って自分好みに直す」という中古住宅の醍醐味に対しても、2025年4月に改正された「4号特例」の縮小が大きな影響を及ぼしている。
そもそも4号特例とは、一般的な2階建て木造住宅などの確認申請時において、一部審査が省略できたルールを指す。昨年、国はこの特例を大幅に見直し、大規模な修繕・模様替えを含むリフォーム時には建築確認申請が必要になった。
ここで図面や検査済証、増改築を含むメンテナンスの記録といった住宅の履歴を示す書類が欠けていると、リフォームの確認申請時に「法に適合していること」の証明が極めて難しくなってしまう。場合によっては、工事が頓挫するリスクや法に適合するための追加工事が必要になってしまう。
一般的に中古住宅の価値は、その建物がいつの時代の基準で建てられたかに左右される側面が強いが(※1)、例えば1981年以前の古い物件であっても、耐震診断・補強によって安全性を客観的に証明できれば資産としての流動性は保たれる。逆に言えば、どんなに立派に見えても履歴が不明瞭なブラックボックス状態の物件は、将来の売却時にも正当な評価を得にくくなる。書類がしっかり作成されるようになり、構造規定も強化された2000年基準(※2)以降の物件であるかどうかは、現代の目利きにおける一つの大きな目安となるだろう。
※1:旧耐震・新耐震
1981年6月の建築基準法改正を境に、それ以前を「旧耐震」、以後を「新耐震」と呼ぶ。新耐震は震度6強?7程度の地震でも倒壊しないことを目指した基準。
※2:2000年基準
2000年に木造住宅の構造規定がさらに厳格化され、地盤調査や柱の接合金物の指定などが義務化された。この時期を境に、検査済証などの重要書類の提出状況も格段に向上した。
納得の家選びに必要な
思考のアップデート
中古住宅シフトが加速する2026年、家選びの基準は「築年数」という単一のモノサシから、より実務的で多角的なものへと進化している。金利の上昇傾向を前に、早期の決断を促されるような心持ちになることもあるだろう。ただ中古だからこそ、先に挙げた将来の資産価値を左右する「3つの新基準」を賢く見極めてほしい。
中古住宅の購入はゴールではなく、自分らしい暮らしを育てるスタートだ。単に「今、いくらで買えるか」という視点を超え、「次に売れるか」「必要に応じて直せるか」を判断の軸に据えること。この思考のアップデートこそが、激動の市場で納得のいく住まいを手にするための、最も確実な道なのである。
(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)
さくら事務所公式サイト
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