なぜドル高是正を目指すのか
トランプ支持率は過去最低水準

 トランプ氏のドル高を是正する姿勢は、貿易赤字を削減するためだろう。その先にあるのは、米国を再び偉大にする=MAGAの実現だ。

 トランプ氏は、貿易赤字は損失(悪)であると断じている。米国は世界に安全保障を提供したのにもかかわらず、貿易相手国は米国向けの輸出を増やし、富を搾取したと非難した。「今こそ、その状況に終止符を打つべき」というのがトランプ氏の主張だ。

 米国が貿易相手国に高い関税をかける、いわゆるトランプ関税も、その主張が背景にある。トランプ関税を避けるために、日本の自動車や鉄鋼、台湾や韓国の半導体メーカーなどは、相次いで対米投資の積み増しを表明した。トランプ氏は、それが米国の鉄鋼、造船、自動車、半導体など製造業の復活につながると考えているのだろう。

 ドルが円や人民元などに対して下落すれば、米国企業の輸出競争力が上向く可能性はある。輸出が増えれば、米国の経済成長率は高まるだろう。それは、さびた工業地帯=ラストベルト労働者層の雇用や所得機会の増加につながるとの見立てだ。

 さらに、トランプ氏は国家安全保障戦略で、西半球の支配を重視する方針を示した。ベネズエラ攻撃で、その考えは現実のものに。グリーンランド領有の主張と、それに続く欧州諸国との関係悪化は、北大西洋条約機構(NATO)の意義が低下する懸念を高めた。

 そうしたドンロー主義は、石油などエネルギー資源、レアアース(希土類)など鉱山資源にも強い影響力を持つ。米国に必要な資源を調達し、世界の供給網を米国の傘下に置き、米国内で生産活動を増やす――。こうして製造業が復活すれば、軍事力のさらなる強化にもつながる。

 中間選挙を控える中、トランプ氏はこれまで以上に自身の主張を強めていくだろう。過去最低水準に落ちた支持率を回復するため、ドル高の是正も推し進める可能性は高い。