藤:ようやく、ですね。ようやく「デリカミニ」という名前のクルマを、最初からそのつもりで造れた、という感覚です。先代は、限られた条件の中で、どうやってデリカらしさを織り込むか、という勝負でした。でも今回は、最初からデリカミニとして設計できる。ですから、デザインも、内装も、操作系も、「デリカミニとは何か」を一度立ち止まって整理した上で造ることができたんです。

F:先代は“スクランブル”(緊急発進)的に生まれたデリカミニ。今回は“あるべき姿”のデリカミニ。

藤:そう言っていいと思います。ですがもちろん先代があったからこそ、何が評価されて、どこが足りなかったのかがはっきり分かった。その積み重ねがあって、今回のフルモデルチェンジでやっと、本来やりたかったところまで踏み込めた、というのが正直なところです。先代がなければ、今回の形はできなかった。

F:一見すると“早すぎるフルモデルチェンジ”に見えるけれど、実際には、ここで初めてデリカミニが本来の姿にたどり着いた、と。

藤:はい。私たちとしては、そういう位置づけで考えています。

「どこを変えないか」に時間をかけた理由

F:「売れているから強気にガッと造った」という話ではないんですね。

藤:そこは誤解されやすいところなんですが……実際には逆なんです。売れているときほど、次は難しくなる。先代で評価していただいたポイントを壊してはいけない。でも同じことを繰り返すと飽きられてしまう。しかもデリカミニは、「軽自動車」という限られた枠の中で、相当“キャラの強いクルマ”になりました。そうなると、少しのズレがそのまま「違和感」として表に出てしまうんです。

F:違和感、なるほど……。

藤:だから今回のフルモデルチェンジでは、「どこを変えるか」よりも「どこは絶対に変えないのか」にかなりの時間をかけて整理してきました。デザインはもちろんですし、クルマの立ち姿や使い方のイメージ。ユーザーさんがこのクルマに期待している世界観。そこを崩さないことが、大前提でした。

F:守るべきところを先に決めた、ということですね。

藤:その通りです。守る軸がはっきりしないままで新しいことを足してしまうと、クルマとしての芯がぼやけてしまいますから。デリカミニは、アウトドアテイストとかSUV風という言葉だけで語られがちです。でも我々は「日常の中で使い倒せる相棒」であることのほうがずっと大事だと思っています。買い物も送り迎えも週末のちょっとした遠出も、全部まとめて引き受けられる。その延長線上に、少し荒れた道も走れる、という立ち位置です。

F:なるほど。いいお話です。