不都合な習近平

 しかし、中国の習近平総書記(国家主席)はそうはいかない。

「台湾で大変なことが起きたとき、私たちは日本人やアメリカ人を救いに行かなきゃいけない。共同行動を取っているアメリカ軍が攻撃を受けたとき、日本が何もせず逃げ帰れば、日米同盟はつぶれる」

 1月26日、テレビ朝日での党首討論で、高市首相はこのように述べ、再び台湾問題に深く言及した。筆者も「その通りだ」とは思うが、案の定、中国は反発し、春節(旧正月)を前に、あらためて自国民に対し日本への渡航自粛を呼びかけたことは記憶に新しい。

 ただこれは些末な出来事だ。

 大事なのは、高市政権が発足した去年10月、中国・北京で開かれた中国共産党にとって重要な会議「4中全会」で、2027年秋に行われる党大会での習近平の「総書記4選」を進める方針が固まったこと、そして、超異例の「4選」が濃厚になった習近平が、1月24日、盟友と見られてきた中国共産党・中央軍事委員会の張又侠副主席らを粛清したことだ。

 国内経済の立て直しがうまくいかない中、習近平が4選を果たすには、これまでスローガンとして掲げてきた「中華民族の偉大なる復興」、すなわち台湾統一を成し遂げなければならない。

 そのためには、武力を行使してまで台湾を統一することに慎重な張又侠を、たとえ幼なじみであっても失脚させるしかないと考えたとしても不思議ではない。

 台湾統一を前に、自分に従順な最強の軍を作ろうとしている習近平にとって、防衛力を強化し、サイバー、宇宙、電磁波といった新領域戦に備えようとしている高市首相は邪魔でしかない。スパイ防止法の制定などインテリジェンス強化に前向きな姿勢も不都合極まりないのだ。

 高市首相はこの先、トランプと習近平とのグランド・バーゲン(大国間取引)を警戒しつつ、気分屋の大統領の機嫌を取り、牙をむく大国の動きに備えるほかない。

ハネムーン期間はもうない

 政権発足後100日のハネムーン期間が終わるか終わらないかのうちに衆議院解散に踏み切り勝利した高市首相。

 その高市首相はここまでの首相就任3カ月で、ガソリン暫定税率廃止、電気・ガス代支援、子育て応援手当支給などを達成してきた。とはいえ、すべてが高市政権による成果というわけではない。

 いろいろな意味で日本を強く豊かな国にできるか、選挙後、すぐに「鼎(かなえ)の軽重」ならぬ「サナエの真価」が問われることになる。

(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)