現地採用と駐在員で違う
「学習意欲」のコントラスト
この課題は、社員の「学習意欲」にも直結します。シリコンバレーの現地採用社員は、常に「いつ解雇されるか分からない」という危機感(Crisis)と隣り合わせです。だから彼らは貪欲に学び、自分のスキルをアップデートし続けます。自分の市場価値を高めることが、唯一のセーフティネットだと知っているからです。
一方で、手厚い身分保障に守られた日本の駐在員は、その危機感が薄い。夜の会食には積極的でも、平日の夜や週末に自己研鑽に励む人は比較的少ないようです。
こうした危機感の欠如が、学習意欲の欠如につながり、結果として現地のイノベーションのスピードから取り残されていくのです。
「自社」を誇れますか?
日本とシリコンバレーの違い
最後に、社員の「誇り」について触れたいと思います。
Teslaの社員は、自社のクルマに乗り、自社のミッションを熱く語ります。Googleの社員は、自社のロゴが入ったTシャツやスニーカーを普段から身に付け、自社のサービスが世界をどう変えているかを誇らしげに話します。彼らにとって、会社は「誇り」そのものです。
Teslaの工場を見学した際のこと。この工場は元々、トヨタ自動車(と米GM合弁、NUMMI)のものでした。トヨタの工場をよく知る人によれば、以前は工場内に多くの「注意事項」が掲げられていたそうです。しかしTeslaの工場となった今は「TESLA」という巨大なロゴ看板が掲げ、工場内でも自社ブランドを強くアピールしています。働く場所においてさえ、自社への誇りを可視化しているのです。
一方、先述した大手日系企業の駐在員たちは、自社のロゴが入ったカップやシャツといったグッズを、(現地では魅力が薄いと感じるのか)恥ずかしがって使いたがらないそうです。
ミッションへの共感、危機感に基づく学習意欲、そして自社への誇り――。日本企業とシリコンバレー企業の違いは、制度や福利厚生の差にあるのでしょうか。それとも、根底にある「マインドセット」や「自己肯定感」の違いでしょうか。
どちらの文化が優れているかという単純な話ではありません。大切なのは、自社が何を核に据え、社員の誇りや自己肯定感をどのように育んでいくか。シリコンバレーの強烈なコントラストは、私たちに考えるきっかけを与えてくれます。








