一方で常にほんわかめでたしハッピーというわけではなく、誰かが報われないことや切なさを抱えたまま、あるいは涙を浮かべたまま話が終わることもある。誰かの涙というのは読む人見る人の共感を誘うもので、キャラに一層心が引かれていくことになる。
ちいかわやハチワレの孤独感は
じんわりと現代の大人に共感をもたらす
大人向け要素の2つ目は、世界観に現代の大人に近い生活感があることである。キャラは家族を持たず、一人一人が(少なくとも主要キャラのちいかわとハチワレは)独立して住んでいる。
家で一人で夜食を食べてニッコリしたり、布団で横になったりした際ににじみ出る孤独は、現代の多くの大人が感じたことのあるはずのもので味わい深い。
家は自動的にそのキャラに備わっているものではなく、ちいかわはキャンペーンで当選した家に住んでいる。
メルヘンな世界かと思いきやお金の描写もなかなかリアルで、「草むしり」や「討伐」といった“労働”をこなしてその対価として報酬を得る。勉強して資格試験に合格すれば収入がアップする、といった描写もある。
サザエさんは家族の物語、クレヨンしんちゃんはしんちゃんを中心とする家族の物語(特に劇場版)で、読者・視聴者はどこか傍観者として接することができるテンションがあるのだが、ちいかわは個人と個人が織りなす物語であり、「ひとごと」というだけに留まらない生々しさがある。
おそらくキャラが現代人に近い生活実態で、読者・視聴者が自然と自分を重ね合わせて見るからであろう。かわいい絵柄とリアルな世界観のギャップが面白い。
そんな中でお米が無限にほかほかに炊かれている炊飯器が地面に埋まっていたり、マンボウが飛んだり、メルヘン寄りの突拍子なさもあって、ここもリアルな生活感とのギャップを生み出している。
3つ目の大人向け要素は、唐突に差し込まれる「ホラー回」である。ホラーといっても悲鳴を上げるようなものではなく、得も言われぬ不安に包まれるような、神経をゾワッと刺激してくるような怖さである。







