癒やしの中に唐突に訪れる「ホラー」が
中毒性をはらむ面白さ

 たとえば唐突に異形の存在が接触してきたり、魔女に拉致されたり、川で拾った得体の知れない不気味なものをおいしいと言って食べたり、心身が怪物になりかけたり、などである。

 受け手はちいかわの恐怖を、「ホラー映画を観たときの恐怖」の按配で「この恐怖は外部のもの」としては処理しにくい。

 日常癒やし回で日常の尊さが丁寧に描写されているので、作中の恐怖をもたらす存在を「日常を破壊するかもしれない緊張感ある脅威」として受け止める。これは結構ショッキングなエネルギーを伴っている。

 恐怖をもたらす存在や出来事は思考の外・想定の斜め上から現れるので、単純に想像力が刺激されるこの面白さは中毒性をはらんでいて、「次はどんな怖いことが起こるのだろう」と、怖いもの見たさではあるがつい楽しみにしてしまう。

 頻度はそう多くはないがこうしたホラー回と、日常癒やし回の往復で、受け手は飽きることなくコンテンツを堪能し、キャラに接する時間は積み重ねられ、キャラへの愛着がどんどん増していくという寸法である。

 今年は全世界の子どもたち(主にα世代だろうか)の間で「イタリアン・ブレイン・ロット」というネットミームが大流行している。

 AIが生成したリアルでシュールでともすれば不気味なキャラクター群であり、3本足のサメ「トララレロ・トラララ」や木製バットを持った木の棒が擬人化した「トゥン・トゥン・トゥン・サフール」などが代表的だが、キャラクター数はゆうに100を超え、ネットミームだけあってユーザーらがどんどんキャラを考案して世に送り出すので、全体を正確に把握するのは極めて困難な状態である。

 世界的なネットミームということで学術的にも分析される対象になっているが、子どもたちは妙に中毒性のあるこのコンテンツをただ遊び倒しているにすぎない。

 そのブレイン・ロット関連のグッズが、グッズショップやおもちゃ屋にポツポツ並ぶようになった。

 その種の店に我が子とよく行くので、人気の規模をなんとなく推測するくらいの経験知を積んできているのだが、イタリアン・ブレイン・ロットの国内の広がり方は、ここ数年ネットミームがグッズ化されたものの中ではおそらくトップである。