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「リベラリズム(自由主義)は左右両派から邪魔者扱いされている」。レーガン氏、オバマ氏、バイデン氏の3人の米大統領に仕えた法学の権威、ハーバード大学のキャス・サンスティーン教授は米国の現状をそう分析する。個人の自由や法の支配はトランプ政権下で守られるのか。特集『総予測2026』の本稿では、2026年11月の米中間選挙で勝利すると見られる党や、議会をも凌駕する大統領権限の実態について聞いた。(聞き手/在米ジャーナリスト 岩田太郎)
リベラリズムへの圧力は
北米と西欧で強まっている
――米国でリベラリズム(自由主義)は退潮したのでしょうか。それはトランプ政権以前から起きていた印象です。リベラリズムの概念を踏まえてお聞かせください。
言論や宗教の自由を考えてみましょう。対立する意見を持つ人たちを歓迎したくないこともある。しかし、自由は“個人の生活の安全”に関するもので、例えば「政府が間違いを犯している」と声を上げても収監されないための基盤が必要です。それがリベラリズムです。多元主義という意味もあり、経済成長をもたらす原動力です。
リベラリズムは、米国において健在です。しかし、過去数十年と比較すると、北米や西欧で、より大きな圧力を受けていることも確かです。リベラル派(一般的に米民主党を指し、経済・社会的な平等のために政府の役割を積極的に認める立場)、つまり左派内ではマルクス主義に影響され、「人種・ジェンダーの不平等や環境破壊の問題はリベラリズムだけでは対処できない」と考える“反自由主義”が台頭しています。
この萌芽は1960年代に見られ、2010年代に顕在化した。右派(一般的に米共和党を指し、政府の役割を小さく抑え、伝統的価値観を尊重する立場)でも、規制で縛られることや、増税などに対して憤りが蓄積しました。今、左派と右派の両方でリベラリズムを邪魔者扱いする向きが強まっています。
――トランプ政権下でリベラリズムは維持できるのでしょうか。
リベラリズムに大きな圧力がかかる中、トランプ共和党はさらに勢いを増すのか、それとも民主党が復権へのきっかけをつかむのか――。次ページでは、26年11月の米中間選挙の予想のほか、米最高裁とトランプ政権の緊張関係について解説する。







