一段と難しくなるトランプリスク対応
何より懸念は…株価や為替も要注意
トランプ関税に対する米最高裁判決が出たことで、米国の政策が法秩序を守り、従前のソフトパワーを重視するものに徐々に回帰するとの見方はある。
ただし、いまだトランプ氏は司法判断に素直に従っていない。同氏は「裁判所は輸入禁止や制限、禁輸などの権限を全面的に認めた」と述べた。根拠法を代えて関税を発動する考えも示した。トランプ政策のリスクは、一段と上昇したと考えたほうがいい。
何より懸念は、主要品目の輸入数量制限だ。企業の自助努力で数量制限に対応するのは困難である。トランプ氏は国家安全保障戦略を公表し、ハードパワー(軍事力)で西半球を平定して経済利得を増やす方針を表明した(いわゆるドンロー主義)。経済面でも合理性より「圧力」を重視する可能性は高い。
これは非常に危険な兆候だ。世界の金融市場と経済、国際社会は、長い時間をかけて専門家や投資家が構築した理論、規範、規制、法令に支えられてきた。
今すぐではないにせよ、世界の大手投資家が“米国売り”を行う可能性はある。なぜなら今後、トランプ氏の議会運営が難航することが予想される。大統領令を乱発し、世論や同盟国からの批判が増える恐れもある。それは、米国抜きの経済連携協定など、世界のパワーバランスを変化させるだろう。
それらはいずれも、世界の基軸通貨である米ドルの信認が低下する要因になる。関税の還付がどうなるかは不透明だが、経済対策が増えて連邦財政が悪化すれば、米国債の下落圧力も高まるだろう。割高感のある米AI関連銘柄など、米国株を売る投資家も増えるだろう。
それに伴い、債権の焦げ付きが増えたプライベート・クレジットの苦境が深刻化しそうだ。プライベート・クレジットファンドの苦戦は、2007年8月のパリバショック(BNPパリバを発端とするサブプライム問題)に似ているとの指摘もある。
米国売りが本格化すると、日本企業の業績にかなりの悪影響が及ぶ。日本企業がこうしたトランプリスクに対応するためには、今のうちに欧州や、グローバルサウス諸国市場で事業領域を拡充する必要性があるはずだ。
第2次高市政権は、米国との関係強化が世界経済の安定に必要だ、との価値観を欧州諸国やインドなどと共有すべきだろう。いずれにしてもわが国は、トランプリスクに対応する重要な局面に迫られている。








