「貯蓄」の枯渇と国債の増発
この想定外のルーブル高は、石油・ガス税収の目減りに加え、輸入品にかかる付加価値税(VAT)などの税収も減少させ、歳入の下振れを招いた。もっとも、ロシア財政が苦慮している根本要因は歳出側にある。2025年の歳出はGDPの2割に当たる43兆ルーブルに拡大し、軍事・治安関連が支出の4割を占める。短期的な削減は難しく、歳入側の下振れを歳出圧縮で吸収する余地は乏しい。結果として、2025年の連邦財政赤字は5.6兆ルーブル(GDP比2.6%)と、当初計画(1.2兆ルーブル)を大幅に超過した。
問題は財政赤字の財源である。2025年は、2022~2024年に重要な財源となってきた国民福祉基金(NWF)からの赤字補填を見送った。侵攻後のNWFの財政準備金部分にあたる流動性資産の使用は、積み立て停止分の予算への振り替えやインフラ・プロジェクトなどに投資された資金も含めると、累計約15兆ルーブルに積み上がる(注)。
(注)概算の内訳は、(1)赤字補填のための取り崩し(2022年3.0兆ルーブル、2023年3.5兆ルーブル、2024年1.3兆ルーブル)(2)基金への積み立て停止分(2022年3~12月4.3兆ルーブル)(3)インフラ・プロジェクト等の非流動性資産への投資分の取り崩し(2024年1.4兆ルーブル、2025年1.0兆ルーブル)。
財政規則を緩和し、政治的判断で取り崩してきた結果、NWFの流動性資産残高は2025年末に4.1兆ルーブル(GDP比1.9%)まで減少し、侵攻前(2021年末:8.4兆ルーブル、GDP比6.3%)の半分以下になった。2025年にNWFからの赤字補填が行われなかったのは、取り崩せる余地が小さくなったことの表れである。
「貯蓄」の余力が細る中で、赤字ファイナンスは市場からの「借金」であるルーブル建て国債(OFZ)へと移行した。2025年のOFZ発行額は8.0兆ルーブルと過去最大を記録した。







