Photo by Kazumoto Ohno
欧州最高峰の知性と称される経済学者で思想家のジャック・アタリ氏。人類は依然として核兵器による世界大戦の脅威にさらされており、2026年は金融危機の可能性もあると指摘する。特集『総予測2026』の本稿では、その予測の詳細をお伝えする。(聞き手/国際ジャーナリスト 大野和基)
世界核戦争と金融危機が起こる?
「ブラックスワン」の脅威も
――昨年の特集「総予測」では、人類が直面している脅威を「気候変動、核戦争、AIや遺伝子工学」の三つと解説されました。改めて2026年における人類の危機についての見通しを伺います。
脅威は同じく存在しています。一つ目は、世界大戦の脅威。これまで何度もそうであったように、過ちによって世界大戦が起こる可能性は依然としてあります。
二つ目は、金融機関の状況悪化による世界的な金融危機の可能性です。まさに2000年や06年の、不正行為や腐敗がはびこり、市場に誤った情報が提供されたり、債券や株式の担保化も行われていたりした頃と同じような状況にあるとみています。
三つ目は、予測不可能だが起こった際の衝撃が大きい「ブラックスワン」の脅威。例えばパンデミック(世界的大流行)のような事象です。
パンデミックは世界的な気候変化とも関連している可能性があります。気候変動は、年々深刻化しており、容易には目に見えません。しかし、それはいずれ爆発的に拡大していくでしょう。危険が積み重なり、私たちがそれに気付くのは土壇場になってからです。
長期的な危機としては、世界的な水不足も深刻化しており、戦争の兆候となる可能性も否定できません。さらに、キリスト教過激派とイスラム教過激派など、右翼過激派と宗教過激派の勢力拡大というリスクもあります。
――AI技術の進展は雇用・産業・社会構造にどのようなインパクトを与えると考えますか。
AIはハンマーのようなものです。ハンマーは非常に便利なツールで、家を建てることもできますが、人を殺すこともできる。
AIは教育やより良い生活を提供する素晴らしいツールにもなり得る一方、多くの仕事を奪います。また、真剣に検討しなければ、人間の脳を破壊し、少数の利益を増やすための“ドラッグ”として使われる危険性があります。
次ページでは、アタリ氏は「近い将来、韓国と日本が核保有国になる」と予測する。そのシナリオの根拠とは。また、世界で広がる格差と自国優先主義について「利他主義こそが、自分の利益を拡大する最も賢明な方法」と語る。その理由とは?







